辿り着いた先の体育館では何やらバスケの練習をしていた。ということはここはバスケ部か。え、もしかして俺こっちでもバスケしなくちゃいけないの。

「今吉サーン」

「おー青峰、お疲れやったなーって…別におぶってこなくてもよかったんやで…」

「ちげェよ、こいつが勝手に登ってきたんだっつの」

「おいーす!どうもどうも!」

青峰から華麗に下りる。青峰はあーダルかった、といってそのまま体育館から去っていった。あらら行っちゃうの。俺をこの空間に1人にするというの。別にいいけどね!俺ぼっちでも平気だもんね!うひひーん!

「よう来たな、ワシがこの桐皇のバスケ部のキャプテン、今吉や」

「お前一人称ワシとかすげえな」

「なっ、テメ今吉さんにいきなり何言ってんだゴラァ!」

「ハッしまった心の声が!」

「ふざけんなクソがああああ!」

初対面の人に罵倒された。俺の心ブロークン。

「ええて若松。それよりとりあえずスタメンのお前ら、順番に自己紹介しぃ」

「は、はい!おいお前、俺は2年の若松だ。ポジションはC」

「SGの桜井良です…い、1年です…」

「3年の諏佐だ。ポジションはSF。よろしくな」

次々に自己紹介されて、俺はとりあえず全員と握手しといた。最初が肝心だよね!

「あとは青峰や。あいつは1年で、ポジションはPF」

「あ、やっぱあいつスタメンなんだ」

「当然や。ウチのエースやからな」

「へー」

そうなんだーと頷く。どことなく若松の顔が不満気なのは気にしないでおこう。とりあえず自己紹介しまっすまっす!

「俺は日立白夜!ピッチピチの17歳!特技はイタズラ!よろしくお願いしゃーす!」

「元気やな」

「それだけが取り柄なんで」

「いいことや」

「ありがとうございやす」

この今吉さんすごい気が合いそうな気がするのはなんでだろう。直感だけど。なんとなくね、なんとなく。
と、そこで妙に聞き覚えのあるようなないような声が聞こえた。

「あー、その方が日立さんですかー?」

「おー、桃井、お前も挨拶しときぃ」

「モモイ?」

誰だろう、と振り返るとピンクの長い髪を持った、制服のうえに何故かパーカーを着てる女子がこちらにぱたぱたと駆け寄ってきた。なんだろう、このデジャヴ。すごく誰かの身近な人な気がしてならない。誰だっけな。

「初めまして、マネージャーの桃井さつきですっ」

「あ、月子か」

「へ?」

「あれ、お前月子じゃないの?夜久月子?」

「え?ち、違いますけど…」

「あれぇ?」

なんかめっちゃくちゃ似てる。うん。柚月の妹に見た目はピンク髪だからあれだけど声がめちゃくちゃ似てる。柚月が妹と電話してるとこを邪魔したときに聞こえた声と似てるんだよなあ。

「ちょっと待ってね」

「?はい」

俺は携帯を取り出すと柚月にコールした。3秒で出た柚月は何故かイラついている。

「なー柚月ィ」

『んだよ白夜』

「だーれだ」

そう言って桃井ちゃんに携帯を渡す。『は?何言ってんだお前。おい、白夜?』とイラついた声が聞こえる携帯を渡されて戸惑う桃井ちゃんになんでもいいからしゃべってみてーと言うと、彼女は戸惑ったように一度今吉さんを見ると、携帯を耳に当てて「も、もしもし…?」と話してくれた。

『つっこ…!??』

「へっ…?」

ガッタアアアン!と大きな音とともに聞こえた柚月の声に俺は爆笑しながら桃井ちゃんから携帯を受け取り、「じゃ!」と一言携帯を切った。ついでに電源も切ってやった。うはっこれでしばらく笑いの種に事欠かないわー。

「え、えっと…?」

なんだったんですか?と聞いてきた桃井ちゃんに俺は笑い涙を拭いながら桃井ちゃんの声と電話相手の奴の妹の声がそっくりだということを説明。それを聞いていた他のスタメンの皆は呆れていた。

「あんた…性格悪いだろ」

「いやーそれほどでも」

「褒めてねえよ」

「なんだかお前と気が合いそうな奴が入ってきたな」

「そないな褒めんといてぇな諏佐」

「褒めてねえよ」

「…………」





遠くから眺めていた原澤は、また厄介な奴がはいってきたなと思った。



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