美月とコンビ解消してから単独で動いていたのだけれど、とある仕事が1人では少々やりづらいものであったため、適当にどこか組織にでも入ろうかと考えあぐねていたら偶然後輩の金久保に出会ったためZodiacに入れてもらった、というのが俺の所属の所以である。
「ふーむ…」
とりあえず暇なので練習場にいた奴を片っ端からしごいてやったが皆疲れたのかへばって動かなくなってしまった。やれやれ、これだから若いもんは!
「(…でもSagittariusなんかは筋がいいなー逸材だな!)」
成長したら凄腕の殺し屋になるかもしれん。今のうちに目ぇつけとこ。それに比べて…
「こんなんでへばってたらダメだぞElektra!」
「ううう…兄さんなんでアホなのにできる子なの…」
レミントンを抱えてしゃがみこむ半泣きの妹の頭を撫でながら、俺は言う。
「いいかー、Elektra?狙撃はな、ゲームみたいなもんなんだよ!だからな、ターゲットを人間だと思っちゃいけない!全部服着たカボチャ程度だと思え!そうすれば殺りやすいだろ?」
「ええ…?」
そ、そうかなあ?と呟く妹にそうさ!と頷くと、そんなわけないでしょ、と後ろから叩かれた。おふう、誰だ?
「おお!お前ここ所属だったのか、Alcyone!」
かつての相方の妹は不機嫌そうに顔をしかめている。顔だけは美月にそっくりだ。ん?いや、こいつが美月にそっくりなのか?……まあどっちでもいいや!
「たった今、出張先から帰ってきたのよ」
「へえ…」
出張先…ねえ?
はあ疲れた、と首をまわす咲月に、先程までへばっていた青空が「お疲れ様です」と近付いていた。
「お疲れさん!今度お前の兄ちゃんにもよろしく言っといてくれよな!」
「―――ッ!!?」
すれ違い様に言うと、咲月は顔を真っ青にしてこちらを見た。だーいじょうぶだっつーの!
「誰にも言わねーよ」
「…………」
じゃあなー!と言い残して、俺は1人、飯を食いに夜の街へと繰り出した。
「………Alcyone?どうしました?大丈夫ですか?」
「あ、うん…大丈夫、大丈夫…」