幼なじみが敵側にいることを知ったのはつい最近のことである。
「(どこでなにしてんのかと思ったら…)」
まさかの敵側。
…まあ、奴には生まれた頃から散々迷惑をかけられてきたし、いざとなれば殺せる…と思う。たぶん。きっと。
「自分、優しいからなあ」
優しい?
苦笑する凌の言葉に思わず瞬くと、隣の柚月も同じように頷いた。
「お前ほどお人好しな奴を、俺は知らん」
そう言って、銃をホルスターにしまう。
殺し屋の端くれとしてそんなことを言われては黙ってられない。俺は負けじと口を開いた。
「優しいって…優しい人は盗みとか殺しはしないだろ」
「普通のマフィアは殺したあと供養せえへんで」
「普通のマフィアは殺したあと手を合わせねーよ」
「…………むぅ」
しない…のか…。そうか…。普通だと思ってた…。
「そんなんだから『優しい殺し屋』とかいう通り名がついて、自殺志願者がFMSに殺してほしいって依頼しに来ちまうんだよ」
「えっ!!?」
ちょ、それ初めて聞いたんですけど!!!その通り名も自殺志願者がうちの組織に依頼に来てることも!
「お前……マフィア向いてないんちゃう……?」
「俺もそう思う」
「…………」
黒光りする鞘に収まっている腰の刀を見やってから、俺はひっそりと溜め息を吐いたのだった。