宇宙科はどうやら一筋縄ではいかないようだ。毎日のロードワークに、食事制限。それと大量の課題。…………まあ、ロードワークはいいとしよう。運動は好きだし。問題は食事制限だ。好物のチョコを食べれないなんて……なんて残酷なんだろう。ひどいやい。
「自分、チョコ好きなんて可愛らしいなぁ」
「そうかね」
ロードワークの帰りに図書館帰りの一条に出くわしたため、途中まで帰ることになった。
「一条はまた図書館か」
「せやで。あ、凌でええよ」
「そうか?んだば、遠慮なく」
「美月は大変やなぁ」
「うん、まあ宇宙科だしね」
「や、そうやなくて、白夜の世話」
「ああ…………うん…………」
あいつとは切っても千切っても裂いても切れない縁で結ばれてるっぽくてね…。
「……お粗末さん…」
「やめてくれ。その優しさで泣く」
凌はまだ知らないだろうから言わないで置くけど、白夜に関わった人間は大体奴のやらかす出来事に巻き込まれる。奴は竜巻…いや、ブラックホールだ。この16年間一緒に育ってきた俺が言うのだから間違いない。まあ言わないけど。絶対言わないけど。被害は少ない方がいい。
「あの、すみません」
「ん?」
凌と別れ、滴る汗を拭いながら寮を目指してると、向かいからイケメンが話しかけてきた。青いネクタイだから同学年だ。
「何か?」
「職員寮って、あれであってますかね?」
「職員寮?」
あれは射手座寮だ。職員寮は確か、あっち方向だった気がする。
イケメンにそう伝えると、彼は人当たりの良さそうな笑みを浮かべ、俺に礼を言うと去っていった。
「(なんか引っ掛かる笑い方だったなあ…)」
汗が背中を伝った。
「チッめんどくせぇな…無駄足だったわ…」
夜久柚月は毒づいた。