がしっと柚月の肩を掴み目を見る。戸惑ったように、嫌悪感をバリバリ表した表情で俺を見た柚月は、口を開いた。
「顔近い」
「あんな、柚月」
「だから顔」
「今日お前めっちゃ面倒事に巻き込まれるから注意しぃや」
「………………………は?」
「水難の相も出てるぞー!」
「朝っぱらから星詠みで水濡れになる柚月を視てもうてなあ」
肩を組んでくる白夜を追いやりながら、のそのそと廊下を歩く。訳分かんねー…なんて言いながら、柚月はいつの間にか隣にいた美月の背中にのし掛かった。
美月は美月で財布を見て、無一文だ!!なんて騒いでる。………珍しいなあ。
「財布が空っぽの相が出てたんだな美月!」
「うざい」
「無一文か?どんま」
どんまいとでも言いたかったであろう柚月が話すのを止めたことに気付いた俺と白夜は、食堂の席に座りながら後ろを振り返った………ら。
「うわ、濡れた…」
「冷たい…つか俺の財布…!!!」
「俺の占いと凌の星詠みが当たったな!いえい!」
「いえーい」
ぱちんっと手を合わせ、再度柚月達を見る。頭を下げる先輩を見てたら分かるけど、水って…定食に付いてる水やんな。美月が巻き添えをくらうのは視てないから、やっぱり中途半端やな…俺の星詠みは。
タオルを持って来て良かったわ…なんて溜め息を吐きながら、はたと気付く。
「タオル寄越せ」
「いや、あのこんな所で変な歩き方してた俺達が悪いんで…すみません」
俺に向かって手を出す柚月と、ひたすら水を零した先輩に頭を下げる美月。一枚しか無いタオル。隣には、もぐもぐと定食のサラダを頬張る白夜。
うーん…と唸ってから、俺は美月にタオルを渡した。
「いやあ、柚月の分のタオルしか無かったからお詫びや」
「え、おう…サンキュー」
「待て凌。俺のタオルだろ!」
「げ、俺これ嫌い!凌やるよ!」
「いらん」