ジリジリと地表を焦がす太陽の熱と、お決まりみたいな蝉の声。
カラリと晴れた空は雲一つ無くて清々しくはある。

けれど。


「…ダルい」


「冷房の効いた保健室でダラけてるくせに何言ってるんですか」


暑さに弱いらしい星月先生はいつにも増して更に職務怠慢気味だ。


「星月先生には夏を“夏らしく楽しむ”って考えがありませんよね」


「この炎天下に5分といたら俺は溶けるぞ?」


「直獅先生は5分どころか授業中フルタイムでサッカーしてましたけど?」


「………そのうち熱中症で倒れなきゃ良いが」


確かに最近は猛暑で、熱中症とまではいかないが暑さにやられる生徒は多い。
実際保険医がこんななので、ちょっとしたサボりには寛大だ。


「それよりも先生?」


「んー?」


ペラリと資料を捲る指を恨めしげに見れば気のない返事が返ってくる。


「いつまでこの体勢でいれば良いんですか?」


先程保健室に避暑に来てから今までずっと、私は彼の膝の上に座っていた。


「俺が飽きるまで」


「その台詞は5回目です」


「じゃあ暑くなるまで」


「冷房止めましょうか?」


別に、この体勢が不満なのではなく。
鍵も閉めてない保健室で堂々とこんなことをして大丈夫なのかと心配なだけだ。


「お前は俺から離れたいのか?」


「まさか。ただ、誰かに見つかったらヤバくないんですか?」


「ヤバいな」


呑気に答える恋人に溜め息をつけば、お腹に回る腕の力が強まる。


「ヤバいとは分かっていても、俺の腕がお前から離れようとしないんだ」


「………あとちょっとだけですからね」


「その台詞は5回目だぞ」


「………」


ちゃっかり数えていたらしい。
仕返しされたのが少し悔しいが、もうどうでも良い気がする。
多分、私もこの暑さにやられたらしい。


「まぁ、例え冷房を止めて暑くなっても離してやらないけどな」


「もし暑くなって離そうとしても、離れませんけどね」





四六時中の熱中症。





今日も今日とて、君との熱に浮かされるんだ。





end.
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