じりじりと照りつける太陽が心底悔い

インターハイも終わり、世の中は夏休みも終盤となっていた
そんなある夏休みのこと
私と誉は参考書と睨みあっていた
受験生である3年諸君には、もちろん当然のことではあるが、今夏は普段よりも自主性を求められていた
毎年労力を費やす宿題というものが存在しない代わりに、自主学習とは鬼畜の諸行である

だが気を抜けば学期始まりのテストで泣きを見るのはあきらかであった

しかも学校推薦なんてものを狙う私にとって、これは死活問題なのだ

風通しのよい金久保家の一室(しかしそれも風が吹いた時だけに限る)

ルーズリーフにジワリと流れた汗が染みるのに気付く
気にせず集中していたが、消しゴムをかけたい所にポタッと落ちた汗を見てやる気が一気にそがれた
一息つこうと向かい側に座る誉を見るが、その姿は消えている


「……え?」


開けっぱなしの戸を確認しようと首を振る


「っ!?」

「ふふ、びっくりした?」


頬に触れる冷たいものに心臓が跳ねる
犯人である誉を睨むと、悪びれる風もなく微笑む誉が優しく頭を撫でている


「っもう、…心臓びっくりしたんだけど」

「ごめんね、でもほら」
「え?」

「はい、どうぞ」


ぽんと手に置かれたソレは、先ほど飛び上るほど冷たかったもの


「アイス…しかもスイカバーっ!」

「頑張ってたからご褒美だよ」

「誉大好き!」

「はいはい」


そういって誉は私の隣に腰をおろす
その間にも私は封を切って食らいつく
甘くて、種に見立てたチョコの味に幸せを感じていると急に肩を強く抱かれ、突然耳元でささやかれた


「僕はね、スイカバーくらいで簡単に釣られるのは不満だなぁ」

「う」

「まぁ、そういうところも全部含めて可愛いと思うし、愛おしいなって思ってるんだ」

「……嬉し恥ずかしっなんだけど、突然どうしたの?」


なんだか不自然すぎる言葉達に疑問を感じてみあげると、ふにゃっと目元をほころばせ、口角を上げ緩く微笑む誉と眼が合う


ご褒美だよって言ったでしょ?


(真面目に勉強してたからアイスみたいにべたべたに甘やかしてあげたくなったんだ)(え、っちょ近い近い!)(ご褒美のキス、欲しくない?)

全力で「欲しくない」といえない自分に腹が立って、更に誉をギッと睨めば上から唇が重ねられた
アイスが融けてそれどころじゃなくなるまであと少し





end.

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