「黄瀬」
 スポーツマンだな、彼が笑うたびにそう思った。名前を呼ばれて顔を上げると、怒られたりもしたけどやっぱり笑って今のナイスなんて笑って貰えた時は死ぬほど嬉しくて、その後忘れないように何回も練習した。手を伸ばしても、ずっと先を行ってしまうから頑張った。
(バスケ以外の青峰っちはガキ大将みたいなことばっかなんスけどね)
 日焼けした肌に汗が滴っているのを、くるくる目が回るほど色んな技を繰り出すのを、見てるだけじゃつまらなくなった。少しでも近付きたくて、ワンオンワンねだって。
 出会った瞬間からずっと、ずっと続いている感情が、なにかって名前を探す暇もなく追いかけるのに必死だった。

 青峰のダンク、すぐさま塗りかえられていくスコアボード、湧き上がる歓声。目をつむれば全部が思い出せる。
(青峰っちいなかったら)
(今のオレいないッスよ)

「おい黄瀬、いくぞ」
「笠松先輩、今日オレ本気でいくッス」
「…毎回本気だせ馬鹿モデル」
 桐皇対海常戦。全中三連勝後で無くした笑顔、取り戻させる。
君と羊と青/RADWIMPS

今がその時だともう気づいてたんだ
光り方は教わらずとも知っていた
目の前の現在がもうすでに
思い出色していた

奇跡は起こるもんじゃなくて起こすものだと
手当たり次第ボタンがあれば連打した
今が擦り切れるくらいに生きてたんだ
精一 目一杯を

喜怒哀楽の全方位を
縦横無尽に駆け抜けた日々を

君を見つけ出したときの感情が
今も骨の髄まで動かしてんだ
眩しすぎて閉じた目の残像が
今もそこで明日に手を振ってんだ

世界が僕らを置き去りにするから
負けじと彼らを等閑にしてやった
するとどうだ寂しがったこの世界が
向こうから割り込んできた

今日の僕を賞味できる期限は今日
眠らせて腐らせるくらいならばと
青いままでヘタも取らず落ちた僕を
君は受け取ったんだ

苦いけど 苦しくはないよと
君は すっぱいけども
悪くはないよと
そう言った

起承転結の転だけを
欲張って頬張った僕らの日々よ
結することなどの無い日々を

君を見つけ出したときの感情が
この五臓の六腑を動かしてんだ
眩しすぎて閉じた目の残像が
向かうべき道のりを指さしてんだ

リアルと夢と永遠と今と幻想が
束になって僕を胴上げしてんだ
あの日僕らを染め上げた群青が
今もこの皮膚の下を覆ってんだ