「はーろー」


既視感はただの記憶違いだ、という説が有力だけれども、これほど、胸が締め付けられるものだっただろうか。

「僕は夏目残夏」

するりとした高身長から落とされる視線は、どこか哀しく感じられる。

「渡狸のssさ」

知りもしない君に『知ってる』と叫んで抱きついてしまいたい。手の平に爪をたてて痛覚で衝動を制御する。


「僕は君のこと知ってるよ、」

どうして?と問うこともできず、ザアアと風が全てをかき回す。あなたの背後で散っていく桜のせいなのか、どうしようもなく切なくて、涙がこぼれた。

「名字 名前、」