いけすかない


現在の時刻、午後17時半を過ぎた辺り。


仲間同士の試合により勝ち組、負け組に分けられた中学生達は今現在高校生とは別のグラウンドで各々の自主練をしている真っ只中。





その最中、一人練習に身が入らない男が一人....



「 どこおんねん 」




先程からコート、グラウンドと歩き回る男.白石蔵ノ介、である。

すっかりトレードマークとなってしまった真っ白な包帯が巻かれた彼の左腕には愛用のラケット






「 まさか一緒にふけとんのとちゃうやろな 」





でも今はその愛用のラケットも振るう気にはなれない


それは大事な練習よりも気になって、気になって仕方がないものがあるから...






「 なぁ、悪いけどちょっとええか 」




「 ....んー、え?なんか用ー? 」



白石が声をかけたのは言わずと知れた青学ゴールデンペアの一人、菊丸英二


菊丸は大石と打ち合いをしていたところであった



その大石もボールを投げる手を止めて菊丸と白石の元へと駆け寄る


「 どうしたんだ?白石 」





「 ...不二、どこおるか知らん? 」



「 え、不二? 」



大石と菊丸はお互い顔を見合せキョトンとした顔で聞き返してきた




「 ....知らん? 」




でもそう尋ねてくる白石の表情は何故だか何処か深刻そうで....



「 不二がどうかしたのか? 」


それが少々気になった大石は疑問を投げ掛けてみた





「 ....いや、知らんかったらええわ。練習中んとこ、悪かったわ 」




だが白石は大石の疑問には答えることなく、そう言うと二人に背を向けて再び歩きだした









「 不二なら多分医務室にいんじゃない? 」



と、不意に白石の背後から投げ掛けられた言葉に彼の足はピタリと止まる



「 .....医務室? 」




白石が振り向くと言葉を放った張本人の菊丸がニカッと笑いながら、こっちに戻って来るよう手招きをしている



「 なんなん? 」



白石は訳も分からぬまま菊丸の元へと歩み寄る...
そして近くまで来ると菊丸がこそこそと白石の耳元で話しはじめた


大石はその間どうしていいものか分からずその場で固まったままだった..





「 実はさっき、不二と弟対俺と大石で試合してたんだけどさ...不二が足挫いちゃったみたいでさ..そんでさぁ医務室に... 」


「 あぁ..なるほどな。



.....でも、そないこそこそ喋ることちゃうやろ 」



こそこそと周りに聞こえないように小声で話している菊丸の様子に多少の違和感を白石は感じていた



「 いやーやっぱ、周りに聞かれて不二達がサボってるとか思われると、にゃあ......可哀想だし 」


菊丸が思わず苦笑いを浮かべながら「だから白石にも言うの悩んだし」と最後に付け足す、が白石は菊丸の言ったある言葉の一点が気になって他の言葉等耳には入らなかった




「 不二、達?不二、誰とおるん? 」



不二と一緒に試合をしていた弟の裕太が白石の頭に一瞬過った。
が、コート脇で裕太が観月と話をしているのが偶然白石の視界に入りその考えは口に出すことなく打ち消されてしまった





「 ん?知りたい?


でも誰にも言うなよ?サボってるって思われそうだし 」



菊丸は念を押すようにそう言うと白石の耳元に顔を寄せて呟いた



「 ――だよ 」


































白石は医務室へと向かっていた。






白石は菊丸の話を聞いた後、早々に礼を言い今が練習の真っ只中なのも忘れてコートを抜け出した



ずっと練習も身に入らないほどに気になっていたものに会いに行くため...








「 ....ほんま好かん奴 」







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