Love call
「 やぁ、菊丸 」
「 ん?、あれー?乾が来るなんて珍しいにゃ 」
昼休みを知らせるチャイムが鳴ると同時に静かだった校内はガヤガヤと騒がしくなる。売店に向かう者もいれば、友達同士机をくっつけてお弁当を広げ始める者もいる、そんな中3年6組の教室にクラスが離れている為に普段は殆ど顔を出さないデータマンの乾が訪れた。
丁度、菊丸がお弁当をカバンから出した時、乾が菊丸の机の正面まで赴き菊丸に話しかけた。そして冒頭の会話へと繋がる...
「 ああ、ちょっと不二に用があってな 」
そう言って乾が周りを見回して目的の人物を探してみるが何処にもいない。
そんなことお構い無しに菊丸はお弁当箱を開けて「やり!エビフライ入ってるにゃ」等と呟きながらガッツポーズをしている
「 ...いつも不二とお昼を食べてるんじゃないのか? 」
「 いつもじゃないよ、不二は手塚と食べたりおチビがいるからって屋上で食べたりしてるし。俺も大石と食べる時もあるしさ
―でも今日は一緒に食べるけどね 」
「 だが不二の姿が見えないようだが.. 」
「 あー1組に辞書借りに行った。5限目使うのに忘れたんだってさ 」
そう言いながら菊丸はエビフライを箸を使わず指で持ってパクっと食べる
「 1組、手塚か 」
「 うんまいにゃあ〜 」
「 .......
じゃあ1組に行くとするよ 」
乾は方向を変え廊下に向かって歩く
「 え? 不二すぐ戻って来んだし、ここで待ってればいいじゃん 」
菊丸に背後から引き止められた乾は歩くのを止め菊丸の方に振り返った
「 ...それとも急用? 」
「 .....いや 」
「 んじゃいーじゃん! 」
菊丸は箸を口に加えると無言で自分の向かいの席に手を伸ばして椅子の背もたれをポンポンと叩いた。座れと言っているのだろう
「 いや、大丈夫だ 」
「 ふぅーん、そ 」
菊丸はあっさりした返事を返した後再びお弁当を食べ始めた
「 英二、もう食べ終わっちゃった?
て....あれ、乾? 」
暫くしてようやく不二が6組に戻って来た。右手には辞書を抱えて
「 んー、なんか不二に用があるんだってさー 」
お弁当をすっかり食べ終えてしまった菊丸は伸びをしながら口を開く
「 僕に用? なにかな? 」
不二は菊丸の向かいにある椅子を菊丸と向かい合わせになるように方向を変えて着席する。乾は菊丸の席の真横にある机に寄りかかる感じに座りながら腕を組む
「 ああ、用とは.. 」
「 不二ー腹減った ... 」
乾の言葉を遮るかのように菊丸が机に俯せながら嘆く
「 えー、英二今食べたばっかりだろ? 」
「 お腹空いたー空いて死ぬ死ぬー 」
「 もうわかったよ、僕のお弁当半分いる? 」
そう言いながら不二は自分のカバンからお弁当箱を取り出す
「 やった!ありがとー不二!
やっぱり不二大好きだにゃあ 」
「 英二は調子いいんだから。
どれでも好きなの食べていいよ 」
そう言って不二はお弁当箱を開けた。
「 わぁ、うーまそっ 」
菊丸は無遠慮に不二のお弁当に手を伸ばす
「 ......不二 」
菊丸に遮されてから黙っていた乾が口を開いた
「 あ、ごめんごめん 、
――、で用てなに? 」
ここからようやく本題に入れて、軽くため息をつく乾だった
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