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君は今日大阪へ帰る
駅に向かうバスの中で
何か事故とか起きて渋滞になればいいのに
そうしたらもっと君と一緒にいられるのに.....
なんて物騒なことを考えてみたり
君と僕のこの距離はいつかは縮まってくれるのかな
白石×不二 涙
「 なんや不二くんえらい大人しいな 」
「 ....白石、うちに住めばいいよ 」
「 え?! 」
君は少し驚いた顔で僕を見る
「 ペットってことで 」
「 アホ 」
冗談とばかりに笑みを作って言葉を付け足す。 途端君は優しく微笑んで僕の頭をくしゃっと乱暴に撫でた
ペットの件(くだり)は勿論冗談
でもね........
「 着いたわ 」
バスのアナウンスが終点の名前を知らせる
もうすぐ君とお別れ....
バスを降りて駅の構内を歩く間僕は君の少し後ろを歩く
君の全部を目に焼き付けたくて
「 不二くん 」
白石が改札の手前で立ち止まり僕の方に振り返る
「 もうここでええから 」
そう言って僕に笑いかける
「 いいよ、ホームまで行く。」
「 ほんまにええから、な? 」
どうして?白石は僕と離れるの寂しくないのかな....
「 ...僕も大阪に行っちゃおうかな 」
「 不二くん...それはあかんで? 」
「 どうして? 」
「 明日は学校やろ、不二くんの家族も心配するで? 」
「 フフ........冗談、冗談に決まってるじゃない 」
僕はまた笑顔を作ってクスクスと笑う。別に可笑しくもなんともないけれど
「 不二くん、今日は冗談が好きやな 」
白石はまた僕の頭を撫でる。今度は優しい手付きで....
「 ほな、行くわ 」
「 ....... 」
今、声を出したら瞳いっぱいに涙が溢れて出てしまいそうで.....上手く返事を返せなかった
「 周助 」
「 え?....あ 」
不意に名前で呼ばれて僕は少し驚いて瞳を見開き君の方を見た
途端瞳から一滴.....
泣いてる姿なんて見られるのは恥ずかし過ぎて俯いたけど彼は僕の頬を両手で優しく包み上を向かせる
「 な、なに?もう時間ないよ? 」
恥ずかしくて白石の顔見れないよ...
「 そんな顔せんといて?
またすぐに逢いに来るから、な? 」
「 ...... 」
またすぐに...なんて簡単に言わないでよ、、まだ中学生の僕らにとって東京-大阪の距離は遠いし、お金だってバカにならない
考えたらまた涙が出てくる...
白石は僕の頬を流れる涙を両頬に添えられた手の親指で優しく拭う
「 あ、信じてへんな?
ほんまやで? 」
「 なんで.....そんなこと..言えるの? 」
そう言ったら君はニカッと爽やかに微笑む
「 俺な、今不二貯金しとるんや 」
「 ...不二貯金? 」
「 不二くんに逢いに行く為に貯金しとんねや。交通費かかるしな。結構貯まって来たんやで? 」
「 .....僕のために?..
なんか僕、君に負担かけさせちゃってるみたいだね 」
「 負担とちゃう!不二くんのため....ちゅうより、俺のために貯金しとるんやし 」
「 え? 」
「 俺が不二くんに逢いに行きたいから貯金しとるんや。」
「 ....... 」
「 不二くんに逢えることを考えれば貯金も楽しく思えるわ。趣味になりそうや 」
「 .....白石 」
君は僕と離れても平気なんだと思ってた
でもそうじゃなくて、またすぐ逢えるから........
距離なんて関係ないんだ
それを埋められるくらいの君の愛情がある
「 泣かんで?不二くんには笑顔で見送りして欲しいんや 」
「 ...泣いてないもん 」
「 俺と離れたない!て大泣きしよったくせに 」
「 な、泣いてない!ちょっと目が疲れてただけだもん 」
「 かわええやっちゃな、んじゃそうゆうことにしたるわ
―――――ほな、またな 」
そう言って君は改札を抜ける
「 蔵ノ介! 」
「 ?! 」
「 さっきの仕返しだよ 」
僕も白石貯金しようかな
そうすれば、もっともっと
君と逢えるよね?
「 またね!気を付けて 」
end
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蔵不二は寂しい涙。ちょっと無理あったか..
これにて涙シリーズ完結です。なんか微妙なものあったり(全部?;)しましたが終われてよかったです。
最後までご覧くださりありがとうございました
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