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「 今日の午後偵察に行くんだが不二も一緒に付き合ってくれないか 」
「 偵察に?
別にいいけど..どこの学校に行くの? 」
不二は手塚から借りて来た辞書をパラパラと捲りながら乾に質問する。不二の目線は乾ではなく辞書に向いたまま。
不二が質問した途端、乾の眼鏡がキラリ眩しいくらいに光る...
不二のお弁当をひたすらモグモグと食べていた菊丸はそれに気付き食べていた手がピタリと止まった
「 に゛ゃ ?! 」
「 ?....どうしたの、英二。
まだ食べ足りないの? 」
急に変な声を出した菊丸にようやく不二が辞書から目線を反らし菊丸の方を向いた
「 ち、違う! 不二、なんか怪しいにゃ!乾なんか企んでる! 」
菊丸は机をドンッと叩いた後、乾を指差した
「 は?なんなのさ、急に...
――乾、そうなの? 」
不二は視線を乾の方に向ける。
「 ...企むって一体何をだい?
ただ単に今回は不二が一緒でないと偵察に行き難いんでな。こうして不二を誘いに来たんだが 」
乾は眼鏡を人差し指で軽く押し上げながら不二にそう返す
「 僕が一緒じゃないとって...どういうこと? 」
不二は辞書を机に置き怪訝そうな顔で乾を見つめる
「 いや、偵察に出向く学校側のご指名だ 」
「 ご指名? 」
不二ではなく菊丸が声を上げる。不二はというと「なんかホストみたい..」と的外れなことを考えていた..。
そんな暢気なことを考えている不二の心中など知る由もない乾は話を続けた
「 ああ、不二周助を同行させるなら偵察を許可すると言って来たんでな 」
「 はぁ?なにそれ! 」
菊丸が思わず身を乗り出した。それとは対照的に落ち着いた面持ちの不二
「 へぇ...でどこの学校なの?
裕太がそう言ってくれたら僕は嬉しいんだけどな.. 」
「最近電話もろくに出来なかったし..」と何処か寂しそうな顔をする。
「 当りだ。 」
「 え?当りて...
―――裕太が? 」
不二の表情が少し明るくなる
「 ....いや、ある意味当りだ 」
「 は?どういう意味? 」
途端不二の表情は一変また怪訝そうな顔になる
「 偵察はルドルフだ。
お前をご指名したのは.. 」
「 観月だ。...そもそも部長や副部長でもない弟くんがそんなこと言う権限はないからな 」
「 .......... 」
「 なんだ、どうした?弟に逢えるには変わりはないじゃないか 」
観月の名前を出した途端不二の顔が強張ってしまい乾は少々慌てて弟の名を口にした
「 裕太には勿論逢いたいよ。
でもどうして観月が僕を指名したんだい? 」
「 さぁな。お前と話がしたいと言っていたが 」
「 へぇ....僕は話すことなんて何もないけど 」
「 つうかさぁ、乾 」
今まで黙っていた菊丸が口を開いた
「 なんで今更ルドルフに行くの?
もう俺らとは当たらないよ? 」
「 甘いな...。だがな菊丸、彼ら(ルドルフ)も日々練習で腕を上げている。またいつ何処で戦うかは分からない
..それに同じデータテニスを得意とする観月がやはり気になるしな 」
「 .....にゃるほどね 」
「 裕太、また強くなったかな 」
裕太のことになると不二の表情は緩む....
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