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電車に揺られて何駅か越えると漸く目的の場所に到着した。駅から海までの距離はとても近く少し歩いただけで海へとたどり着けた。が海、砂浜には真夏だとゆうのに誰一人いなかった



「 人おらへんなー 」


「 んー平日だからかな 」





「 なんや貸し切り?


よっしゃ不二くん行こ! 」



白石は鞄を砂浜に置き靴と靴下も脱いでズボンを膝まで捲りあげると子供のように海へと駆け出した



「 あ、待って 」



不二も急いで靴と靴下を脱いで白石の後を追った




「 うわっ冷たっ 」


白石は海に爪先を付けて声を上げた


「 フフ、海...足しか入れなくて残念だね 」



「 まぁ仕方ないわ。ほら、不二くんも入り! 」



そう言いながら白石は浜辺に突っ立っていた不二の手を取り膝下まで浸かる場所まで連れて行く



「 ちょ、ちょっと!ズボンが濡れちゃうよ! 」



白石には膝下の水深でも彼よりも小柄な不二にとっては膝まで捲り上げたズボンにも水が浸かりそうなほどの深さだった。



「 ええやん、たまにはー 」



「 もう他人事だと思って 」



不二はそう言って拗ねる素振りを見せつつ、ふと目線だけで周りを見渡してみる

真っ青に広がる空と陽の光を浴びてキラキラと光る水面...そして目の前には大好きな....


なんだか少し幸せな気持ちになってきて、ズボンが濡れるとかそんな些細なことがどうでも良く思えてきた





「 ふふ。冷たくって気持ちいいね 」




「 やろ? 気持ちええわ 」



「 ふふ。エクスタシー? 」



「 !!...不二くんの口からエクスタシーて、ほんまエクスタシーやわっ 」


「 ちょ、そんな大きい声で言わないでよ!恥ずかしいな 」



そんな他愛ない話を沢山して顔を見合せながら笑い合って、海で遊んで....二人はまるで童心に戻ったかのように時間が立つのも忘れて過ごしていた






――――でも時間が過ぎるのはあっという間で...
いつの間にか、陽が落ちて辺りはうっすらと暗くなってきてしまった




「 あ、そろそろ帰らないと!



てゆうか白石、急いで帰らないと 」

不二は大分慌てた様子で白石に詰め寄る



「 ん? あー大丈夫や、大丈夫! 」


「 え? 」


何故か白石は余裕の笑みを浮かべて不二の頭をポンと軽く叩く



「 それより不二くん、これやろ 」



それよりって白石....



と不二が呆然としていると白石がゴソゴソとズボンのポケットから有るものを取り出した



「 ......線香花火? 」



たった2本だけの線香花火だった。



「 そや。 」


「 2本....だけ? 」




「 あぁ、これな部活の連中と花火やった時のが残っとったんや」


「 へぇ 」





「 ほな、不二くんの分 」



白石が1本の線香花火を不二に渡した



辺りは薄暗くなっていて、昼間は立ち止まっていてもじわりと肌が汗ばむ程に暑かったのに夜はそれが嘘のように辺りは涼しい空気が漂っていた







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