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「 何してるのかな? 」
「 あ、幸村! 」
俺が一足遅れに精市の後に続いて部室に入ると、既にその空間には不穏な空気が漂っていた
不二は精市が来るのを部室備え付けのベンチに腰かけて待っていた
それは別に構わない。それだけではこんな不穏な空気にはなり得ない
...肝心なのは不二の両隣。
先ずは先程の言葉は訂正する。うちの部員達は命知らずだ。
何故ならば..
「 聞いてるの? 何してるのか聞いてるんだけど 」
「 な、何もしてないから!ただ不二がつまんなそうだったから話してただけ! 」
「 幸ちゃん、そんな怖い顔しとったら美人が台無しぜよ。のぉ、不二 」
「 え....あ、うん 」
この不穏な雰囲気の原因はうちの部員の仁王と丸井。この二人が不二を囲んで両隣に座っていたからだ
普段の精市は温厚で穏やかなのだが練習中は勿論、そして不二絡みの時にも弦一郎でさえ冷や汗をかく程に威圧的な視線を周りに向けることが度々とある
最近は後者の方にその傾向が強く見られるが....
精市はそれほどまでに不二に執着している。
精市の頭の中はやはり不二周助のことしか見えていない
精市に直接聞いてはいないが彼の性格からして"他人に執着なんてしない。嫉妬なんてもってのほか"と否定するに決まっているが
――だが一番厄介なのはもしかすると不二周助の方なのかもしれない
「 幸村...なんで怒ってるの? 」
「 怒ってないよ。おいで、不二 」
「 .....幸村 」
立ち上がり幸村の方へゆっくり歩み寄る不二の腕を掴み耳元で仁王が何か囁いている
余り精市を煽るようなことをするのは慎んだ方が良いと思うのだが
「 何をしてるの?仁王 」
案の定、精市の更に不機嫌な声色。
そんなことはお構い無しに何故か少し頬を赤らめた不二が精市の元へと近付く
「 幸村....もしかして妬いてる? 僕と仁王くんのこと.. 」
......仁王、お前は本当に怖いもの知らずだ
精市は何も言わずに不二を自分の元へと引き寄せ、丸井と仁王の両者へと視線を傾けた
「 ......丸井、仁王。早く練習に戻りなよ。
二人共あと3秒以内にコートに戻らないとレギュラーから外すから 」
「 プリッ、おー怖い姉ちゃんやのぉ。 」
「 お前が余計なことばっか言うからだろぃ! 」
「 あれ?あと1秒... 」
「 幸村くんま、待って!もう行くから!ほら行くぜ、仁王! 」
精市の言葉に慌てた丸井は仁王の背中を押しながら慌ただしく部室を後にした
「 ねぇ、妬いてたの? 」
二人が立ち去った後に不二が再び先程と同じ質問をしている。
全く...試合中の不二周助と普段の不二周助、別人なのではないか? 天才にも苦手分野があるということなのか
「 妬いてなんかいない。ただもう少し周りを気にしていて欲しい。君は無防備過ぎて見ていられない
世話が焼けるよ 」
「 ひどいなぁ。無防備って...そんなこと
「 あるから言ってるんだよ 」
やはり一番厄介なのは不二の方なのかもしれない
精市がどれだけお前に執着しているのかが分かっていない
だから精市が嫉妬していてもそれに気付くこともなく、その為に同じことをまた何度も繰り返す....
不二、お前のお蔭で立海の命知らずなテニス部のレギュラー達はいつか全員総入れ代えになるのではないだろうか....
「 不二、それよりなんでここに来たの? 」
「 もー幸村が呼んでくれたんでしょ! 」
「 フフ。冗談だよ。」
当の二人の会話は既に別の話に切り替わっている
全く、平和なものだ
「 ねぇ、蓮二 」
「 .......
俺も練習に戻るとする 」
「 ああ 」
「 柳くん、がんばってね 」
....全くもって平和なものだ
"不二と二人でいたい"
そんなこと言わなくとも分かっている
「 邪魔者は退散せねばな 」
全く世話の焼ける二人だ
俺は苦笑を浮かべつつドアノブに手を伸ばした
end
―――――――――――
ココ様へ捧げます。
お待たせいたしました;
不二のこと大好きだけど不二本人には素直にそれを表に出さない幸村と天然不二的な感じです。
なんか蓮二が主役にみたいに..!余りリクに応えられたかが...ごめんなさい;
ココ様、気に入って頂けたら嬉しいのですが..。どうぞ貰ってやってください
それではリクエストありがとうございました!
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