青峰にとって才能が開花してからの好敵手の居ないバスケは、詰まらないものだった。
バスケを棄てなかったのは只単に、自分の傍に黒子が居てくれたから。
例えパスを貰わなくても一人でプレイ出来る。
けれど黒子から貰うパスはとても心地好くて、当たり前の様にしっくりくる感覚に高揚感を感じた。
そしてなによりもバスケに関しては気が合う唯一の存在は、黒子だけだった。
青峰にとって黒子はとても特別な存在なのだ。
―――
「誠凛高校って、知ってますか?」
昼休みに屋上で青峰と黒子は二人きりで弁当を食べていた。
勿論、弁当は黒子の手作りである。料理は得意ではなかったが青峰が、テツの弁当が食いてぇ、と高校に上がる時に言ってきたので試行錯誤しながらも毎日作ってきている。
話は戻るが突然黒子が発した、誠凛高校という高校名に青峰は、知らね、と簡単に答えた。
「黄瀬君が行ってる高校に勝ったらしいですよ」
練習試合でしたが、と呟き僅ながらに興味を示す黒子に青峰の機嫌は下がる。
「んなの、どーでもいい」
「どうでもって…大輝君」
「黄瀬が勝ったとか負けたとか興味ねぇよ」
負けたんですよ、と黒子が言うも青峰にとっては本当に興味がない事だったので適当に、へーへー、と返す。
そんな聞いた事もない高校に練習試合で負けるなんて、アイツもまだまだだったという事だしどうせ手を抜いてたんだろ、としか思わなかった。
「てか何で、んな事テツが知ってんだよ」
「黄瀬君から聞きましたから」
「はぁ?いつ?」
「この前、一人でマジバに行った時に会ったんです」
「…聞いてねぇんだけど」
だって言ってませんし、と飄々とした表情で言う黒子とは裏腹に青峰はどんどんと不機嫌を露にする。
青峰にとって黄瀬が負けたという事よりも、自分の知らない間に黄瀬と黒子が逢っていたという方が問題だ。
「…この前って俺が居残りだった時か」
「そうですよ」
「今度からどんな時でも絶対一緒に帰るぞ、テツ」
「じゃあ居残りなんかにならないで下さいね」
痛い所を突かれて、うっ…、と口ごもるも黒子を一人にしたくないので渋々ながらも、わかったよ、と答える。
(とりあえず今度、黄瀬に会ったらぶっ殺す)
優先順位は君です