「なぁ日向、明日の日曜、映画観に行かねーか?」


全ては木吉のこの一言から始まった。

部活終わりに疲れた体を叱咤してゆるゆる着替えるなか、いち早く着替えが終わった木吉がそそくさと日向の隣まで近付き冒頭の一言を告げた。

日向は、はぁ?何でお前なんかと…、と訝しげな表情を木吉に向けながらシャツを脱ぎブラウスに着替える。

その着替えを表情はいつもと変わらずヘラリとしてるが、内心ニヤニヤと木吉がしているのにも気付かず。

しかしそれに黙ってないのが木吉と同じく日向に密かに想いを寄せている面子だ。


「日向、それよりも俺の買い物に付き合ってくれよ」

「はぁ?買い物って何買うんだよ」

「先輩、俺んちに来ねぇっスか?」

「え、何で?」

「日向は俺と映画だよな!」

「だから何でお前なんかと行かなきゃなんねぇんだよ!ダアホっ!」


木吉の視線から庇うように二人の間に入り込んだ伊月と、日向の反対側の隣に来た火神が誘うも見事に玉砕。木吉に至ってはキレられた。

苛々を露にする日向をよそに木吉と伊月と火神はバチバチと火花を飛ばしあっている。

その様子を黙って見ている他のメンバーはこの空気を誰かどうにかしてくれ、と言わんばかりだ。


そんな中、割り込んできた人物がいた。


「あの、日向先輩」


流石、影が薄いと言われているだけある黒子が、コソリと日向に話し掛ける。

しかし急に現れた黒子に思わず、どわぁ!、と驚きの声を上げてしまった為、木吉たちの視線も浴びるようになったが黒子は気にせず日向に用件を伝えるために口を開いた。


「門の所で花宮真が待ってますけど」


とんだ爆弾を投下された。
木吉、伊月、火神の纏っている雰囲気が一気に険悪なモノになったかと思えば、日向は何故か黒子の言葉に頬をほんのり赤く染めた。

それをあざとく気付いた三人は一気に日向に詰め寄る。


「ど、どういう事なんだ!?」

「お前まさか花宮の毒牙に…っ!!」

「花宮とどういう関係なんだ、ですか!」



「恋人だっつーの」


それは日向からではなく入り口から聞こえた。

花宮…、と日向が呟けば入り口に立っていた花宮が三人を押し退けて日向の目の前に立つ。


「お前、着替えんの遅いんだよ。俺をどんだけ待たせる気?」

「わ、悪い…」

「ほら、もう着替えたんなら行くぞ」

「おう」


そして何事もない様に日向の手を取り出ようとする花宮を、我に返った三人が急いで止めに入ろうとするがそれよりも早くドアが閉められた。


「「「な、何でだぁぁあぁっ!!」」」



三人の叫び声に首を傾げる日向をよそに隣を歩く花宮は密かにニヤリと笑った。




赤ずきんは狼さんのモノ!
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