「遅い」
「だから悪かったって…」
折角の部活のない休日に恋人である日向と待ち合わせしてデートだったのに、待ち合わせ時間から5分過ぎてから日向が来た。
「全く俺を待たせるとか信じらんねぇ」
「何様だよお前」
「ふんっ、まぁいいや行くぞ」
「おわっ!」
まだデートは始まったばかりなのに愚痴っていても仕方ない。(喧嘩になるだけだし)
日向の手を握り歩き出すと、恥ずかしいだの文句を言っていたが無視を決め込むと諦めて大人しくなった。
「あ、」
「何?」
「いや…何でもね」
「はぁ?はっきり言えよ」
「……あれ」
急にピタリと立ち止まったから聞いてみると、あれ、と指を指された。
その先にはUFOキャッチャーがあって可愛い猫のぬいぐるみが景品だった。(…猫好き、なのか)
「欲しいの?」
「…ちょっとだけな」
「取ってやろーか?」
「は?いや、そんな簡単に取れねぇだろ」
バカか、とでも言いそうな表情にムッときて日向の手を引っ張りそのUFOキャッチャーの所まで行く。
財布から五百円を出して入れると軽快な音楽が流れ出した。
「もし取れたらキスしろよ」
「…取れたらな」
「やっぱなし。取れたら今日一日俺の言う事を聞く、で」
「はぁ!?」
ニヤリと笑って日向から前のUFOキャッチャーに目を向けた。
「ほらよ」
「……すげぇ」
五百円五回チャレンジで五回とも簡単に猫のぬいぐるみが取れた。(俺にかかればこんなもん簡単だっつーの)
猫のぬいぐるみは五種類だったからコンプリートだ。
両手いっぱいになるからスタッフから袋を貰って日向に渡すと、あの約束も忘れたのか素直に喜ばれた。
「じゃ、俺の家行くぞ」
「え?」
「何惚けてんの?忘れてないよな…約束」
「……あ」
「取れたら俺の言う事を聞く、だろ?」
やっと思い出し、嫌な予感がしたのか頬を引きつらせて後退りをしようとしたのでがっしりと手を掴む。
「冗談、だよな…?」
「冗談だと思う?」
「映画…観に行くんだろ?」
「今度でいい…それより」
グッと一気に距離を縮めて日向の耳許で低く囁いた。
「今すぐお前を喰べたい」
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