「僕に食べさせてもらうか自分で食べるか、どっちがいい?」


それはまるで死刑宣告の様だった。(僕にとっては)


昼食はキセキの世代が食堂に集まって食べる。いつも普通の量でも多く感じる僕は、青峰くんや黄瀬くんに少し食べてもらうのだけれど今日はそうはいかなかった。

珍しく僕の隣に座った赤司くんが、青峰くんにミートボールを渡そうとした僕の手を掴んで待ったを掛ける。
そして冒頭の言葉を言われたのだ。


「も、もう食べられません」

「駄目だ。食べるんだよ、テツヤ」

「…赤司くん」

「そんな目をしても駄目だ。テツヤは食べなさすぎるんだから」


そう言ってニッコリ微笑んで、さぁどっちがいい?、ともう一度問われて思わず言葉に詰まる。

正直、食べたくない。
チラリと視線を青峰くんや黄瀬くんに向け、助けを求めるも逸らされた。(役立たずっ)


「答えなければ強制的に僕に食べさせてもらう、になるけど」

「じ、自分で食べます!」

「そう、残念だね」


肩を竦めながら掴んだ手をソッと離されて、変わりにジッと見つめられる。

赤司くんはもうすでに食べ終わっているから、きっと僕が全部食べ終わるまで見ているつもりだろう。(視線が痛いです)


「赤司くん、そんなに見られると食べにくいです…」

「そう?僕に見つめられて恥ずかしそうにするテツヤが見れて、僕は満足だよ」

「…いじわる、です」

「愛故、さ」


そう言ってやっぱりジッと見つめる赤司くんは意地悪だ。

気にしないように頑張って食べようとするけれど赤司くんが、ちまちま食べてハムスターみたいで可愛いね、とか、テツヤに食べてもらえるミートボールが羨ましいよ、等と言ってくる。(食べづらい…です)


でもどうにか辛くも頑張って全部食べる事が出来た。暫くミートボールは食べたくない程の気持ちになるくらいのプレッシャーだった気がする。


「よく頑張ったね、テツヤ」

「お腹いっぱいで苦しいです…」


苦しくなったお腹を気休め程度で擦っていると、少し微笑んだ赤司くんが近付いてきて僕が何か言おうと口を開く前に、唇の端をペロリと舐められた。(ぇ、…なに、を…)

驚きに固まる僕をよそに機嫌が良くなった赤司くんは、僕に意地悪な微笑みを向けてきた。


「ぁ、赤司…くんっ、!?」

「ごちそうさま、テツヤ」




貴方の甘い毒

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