「え!?青峰くんまだ来てないの!?」


体育館に響く位の大きな声で桃井が叫ぶと、今吉と並んでいた桜井が桃井に負けないくらいの大きさで、すみませんすみません!、とぺこぺこ頭を下げながら謝った。

今吉は苦笑しつつ、まだあるんやけどな、と言って先を促す。


「黒子クンもおらんのやけど」

「えぇ!テツくんも!?」


今にも泣きそうな顔をして桃井は、青峰くんはともかく、などと呟きながらスカートのポケットから携帯を取り出した。

そして暫くコール音が鳴り続けた後、寝起きの声で青峰が電話に出る。


「もー!青峰くん!!部活始まってるんだよ?ていうか、テツくんもそこにいるんじゃないの?!」

『んー?あー…いるけど』

「テツ君一人占め狡いー!!」

『うっせぇな、さつき…テツが起きるだろうが』

「一緒に寝てたの!?狡い狡い!」

『あーあーうっせぇ』


話が逸れていってる。
このままではそのまま話が逸れて通話を切ってしまいそうだ。

そうなる前にと、今吉は桃井から電話を代わってもらう事にした。


「あー、青峰、黒子クン起こして部活来な黒子クン怒るんちゃうかなぁ?」

『……テツ、おい、テツぅ』


いや起こす気ないやろその声、と思ったが苦笑をもらすだけで我慢した。
バカップルに付き合ってられる程、暇ではない。


「私が起こしに行きたぁい!青峰くんの馬鹿!ガングロクロスケ!!」

「ま、まぁまぁ、落ち着きぃ桃井」

『テーツぅ』

『ん、んぅ…あお、みねく…?』

『おー、やっと起きたなテツ』

「と、とりあえず早う来ぃや」


これ以上は無理だ。
そう思い用件だけ伝えて即座に通話を切る。
桃井に携帯を返した今吉は、部員に指示を出すことに専念することにした。



―――


「…なんで起こしてくれなかったんですか」

「俺だって今さっき起きたとこだっつうの」

「不覚です…」


まだ眠いのか目を擦り起き上がった黒子に青峰は顔を寄せ、瞼に唇を寄せた。

そして唇に口付けようとした所で、ドスッと横っ腹に黒子の拳がめり込んだ。
容赦ない黒子の拳に思わず唸り青峰がジロリと見つめるも、逆に黒子に睨まれてしまい何も言えなくなる。


「ここ、どこだと思ってるんですか」

「……屋上」

「そうです。いつ人が来てもおかしくないんですよ?」

「…わ、わりぃ」

「じゃ、行きましょうか」


黒子が立ち上がり青峰に手を差し伸べる。青峰は黒子の手を掴んで立ち上がると、手を繋いだまま屋上から出ようとした。

それに気付いた黒子は慌てて手を離そうとブンブン振るが、青峰はしっかりと握っていて離れない。
ので、早々に諦める。

しかし体育館に辿り着くまでの間、人とすれ違うものの流石というか黒子の存在に気付くものはおらず、手を繋いでいても誰も気付く人はいなかった。


「今日マジバ行こうぜ、テツ」

「奢ってくれるんですか?」

「なんでだよ!…まぁ、いいけど」

「青峰くんも好きですね、マジバのテリヤキバーガー」

「テツだってマジバのバニラシェイク好きじゃねぇか」

「シェイクをなめないで下さい。僕のエネルギー源ですよ」

「ははっ、んだそれ!」


「あーっ!!青峰くんずーるーいーっ!」

「あ?」

「桃井さん」


喋っているうちに体育館前まで着いていたようだ。体育館前にいた桃井が青峰と黒子がやってきたのを見つけ、走って二人の元へやって来る。

桃井の視線は青峰と黒子の繋がれた手にいっている。
そしてキッと青峰を睨むが、青峰はなぜ睨まれているのかわからず首を傾げた。


「なんだよ、さつき」

「テツ君、一人占め駄目!絶対っ!!」

「なんのキャッチコピーだよソレ…つかテツは俺んだし」

「そんなの認めてないもん!」

「もん、とか言うな気持ち悪ぃ」

「ひどーいっ!青峰くん最低っ!!」


「あの…」

「なぁに、テツ君?」
「どした、テツ?」


口喧嘩が始まったかと思えば、それに割り込んだ黒子の声に二人とも即座に反応する。

先ほどの争いが嘘のようだ。
黒子は頬をかいた後、空いている手で体育館を指差した。


「部活、しましょう?それでなくとも遅れて来たんですから」

「…そうだったな」
「ごめんねぇ、テツ君…」



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