「あちぃー…」

「暑いなら退いて下さい」

「あー…?無理」


梅雨に入り窓を全開にしていても流石というべきか体育館はムシムシと蒸し暑い。

他の部員もこの蒸し暑さに参り部活に支障が出そうなので、少しの休憩を貰えた。

のに、僕が隅の方で涼をとっているとわざわざ僕の後ろに回り、青峰君が僕を足の間に挟み座り込んだ。(暑い…)(暑苦しい…)


「青峰君、暑いです」

「俺も」

「じゃあ退いて下さい」

「無理」

「…青峰君」

「嫌だ」


さっきからどれだけこの会話を繰り返しているだろうか。(はぁー…)

けれど僕も本気で嫌がったり無理矢理引き剥がそうとしないのも問題なのだろうけど、それが出来ないのだから僕も甘いと自分で思う。(惚れた弱味…でしょうか)

それをいいことに、首に巻いているタオルに頭を凭れかけ人に体重をかけてくる青峰君の重みすら愛しく感じる。

僕の後ろの髪の毛が頭に当たるのか小さくボソリと、擽ってぇなぁ…、と呟く青峰君に口許が緩んでしまうのも仕方がない。


「テツの匂いする」

「僕のタオルですから」

「そりゃそうだわなぁ」

「汗拭かないで下さいね」

「ふはっ、無理だわ」


そう言ってグリグリとタオルに額を擦る青峰君に呆れつつも、仕方ないですねの一言で許してしまう。


「帰りマジバ行くか、コンビニでアイス買うか…」

「僕はバニラシェイクが飲みたいです」

「ほんっと、好きだなぁ」

「えぇ、好きですよ」

「……俺は?」

「はい?」


後ろから青峰君の体温を感じつつ緩い会話を続けていると、急に顔を上げ僕の肩に顎を乗せそんな事を聞いてきた。

横目でチラリと様子を窺うとジッと此方を見つめるだけで、僕の応えを待っているだけだった。

そんな青峰君がなんだか可笑しくて、青峰君の頭に自分の頭を擦り寄せる。(そんな質問…)(愚問ですね)


「愛してますよ」


僕の言葉に満足したのかギュッと抱きしめた後、僕の耳元に唇を寄せ小さくけれど僕の心を響かすには充分すぎる言葉を囁いてくれた。


「俺の方が愛してるから」




お砂糖スパイス
一万打リク

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