廊下を歩いていると青峰君のクラスのドアが開いていて、中を覗いてみると教室の自分の机でつまんなさそうに日誌を書いている青峰君の後ろ姿があった。

青峰君はまだ僕に気付いてないみたいで、ふと悪戯心が芽生え心の中でクスリと笑う。


そしてソロリと得意のミスディレクションを使って青峰君の真後ろまで近付いた。


(まだ気付いてませんね…)


僕が真後ろにいるのに気付かず日誌を書いているのを確認した後、スッと青峰君の目元に両手を持っていき視界を奪う。

少しは驚いてくれるかと思ったのに、んあ?、と気の抜けた声だけで何だかつまらない。


「何やってんだよ、テツ」


しかも一発で僕だと当てられた。

返事のない僕に痺れを切らしたのか目元を覆う僕の両手を掴んで外した後、上を向く。


「…よく判りましたね」

「当ったり前ぇだろ?」

「その自信はどこからくるんですか」


呆れて言えばニヤリと意地悪く笑う。その笑みが様になってるから不思議だ。(カッコいい…だ、なんて)

青峰君は机を前へ押し退けたあと、僕の手を引っ張って前に来させる。
そして足の上に向かい合わせになる様に座らされた。


「……何してるんですか」

「何するように見える?」

「馬鹿やってないで日誌を早く終わらせたらどうですか」

「誘ったのはテツだろ?」


腰に手を回されて逃げられないので(力では到底敵わないので…)仕方無く青峰君の首に手を回す。

そうするとより笑みを深くし欲の隠った声色で、テツ、と囁かれた。

つくづく僕も青峰君に弱いと思わされるけど、これが惚れた弱味というのだろうか。


「今回だけですよ…」


そう囁いて僕から口付けると応えるように回された手に力を込められた。




愛してるが追い付かない
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