「こんな所に居たのか」


テツヤ、と呼ばれて振り向けば屋上の壁に寄り掛かり前で腕を組んで、此方を見つめる赤司君が居た。
僕と目が合うと此方に寄って来て隣に座る。


放課後の部活のない今日、図書室に行き読みたい本を数冊借りて誰も居ない屋上で読んでいた所に赤司君が来た。


「僕に何か用ですか?」

「いや、特にはないよ」

「?そうですか」

「恋人に会うのに理由はいるのかい?」

「…いえ」


恥ずかしげもなく言う赤司君に此方が何だか照れてしまう。

赤司君から視線を外し読書を再開すると、ポスリと肩に重みがかかり横目で見てみると赤司君の頭が僕の肩に乗っている。

気にせずに読書を続けていると手がお腹に回されて抱きしめられ、首筋に温かな吐息がかかったかと思ったら、ペロリと、舐められた。(……は、!?)


「赤司君っ!」

「どうした、テツヤ?」

「止めて、下さいっ」

「どうして?テツヤは僕に気にせず読書を続けるといい」


(集中出来ませんっ!!)
腕を使って抵抗してみるも全く効き目はなく、舐めたりカプリと噛んでみたりを繰り返される。

仕方なく持っていた本を床に置き、両手を使って赤司君を押して距離をとり睨むとキョトリと不思議そうな表情をされた後とてもいい笑顔を向けられた。(あ、)(嫌な予感…)


「テツヤ」

「……」

「テツヤ、おいで」

「……はい」


有無を言わせない笑顔で両手を広げられて、拒絶も出来ず近付くと軽々と抱き上げられ膝の上に乗せられる。

しかも向かい合わせに座らされたから正直言って恥ずかしい。


「僕と居るときは僕に構って欲しいね」

「本にヤキモチやかないで下さい」

「仕方無い、テツヤを愛してるんだから」

「……」

「テツヤは僕のモノだろう?」

「…赤司君」

「愛してるよ、テツヤ」


するり、と頬を優しく撫でられて親指で唇をなぞられる。

ピクリと肩を揺らすと赤司君は満足そうに微笑んで、僕に深く口付けた。




貴方の為の僕
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