黒子は今日の自分を恨んだ。


今日は久し振りの部活のない休みで青峰にデートに誘われた。
それを偶然聞いていた黄瀬が、黒子っちの私服選んであげるっス!、と何故か意気込んでいて有無を言わさず決定付けられた。

そして黄瀬がコーディネートしてくれた服は流石モデル、といった所だろうか。
派手すぎず地味すぎず、首に巻かれたピンクのスカーフが黄瀬のこだわりみたいだった。


そこまではよかった。



デート当日、待ち合わせ場所へ着いて時間になっても現れない青峰に、また遅刻ですか、と小さな溜め息と共に呟く。


『悪ぃっ!今向かってるから動くなよ!』


暫くしてそう電話がかかってきて、仕方無く近くのベンチに座って持ってきていた本を読む事にした。





「ね、一人なの?」


本を読んでいた時、隣に座った少年に肩がぶつかり謝ってまた本に集中しようとしたが、その少年の隣に居た少年の友人であろう少年に声を掛けられる。


「人を待ってるんです」


簡潔にそう言って視線を本に戻すと、

「君、可愛いね」

「待ってる間、暇でしょ?その間、俺等と遊ぼうよ」

と軽い口調で言われ何故男である自分にナンパみたいな事をするのだろうかと、訝しげな表情を向ける。

しかしそんな黒子を気にする様子もなく、隣に座っていた少年が黒子の肩に手を置いた。


何するんですか、と口を開こうとする前に急に前から肌黒い手が伸びてきて少年の腕を掴む。


「テメェ、何気安く触ってんだ」


ドスの効いた低く唸るような声に二人の少年はヒィっ、と叫び肩を震わせる。

それもそうだ。
目の前に現れた人物、青峰は目付きも悪く身長も中学生に思えない程大きい。
しかも相手はベンチに座っていて青峰は立っているので、見下す瞳や威圧感が半端ない。


「人のモンに手ぇ出してんじゃねぇよっ!」


そう怒鳴ると黒子の手を掴み自分の方へ引き寄せる。
そしてそのまま手を引っ張りその場を去っていった。



「青峰君」

「……」

「青峰君…」

「…テツ」


人通りの少ない路地裏まで行くと、ピタリと止まって黒子を引き寄せ抱きしめる。

黒子も抵抗せずに青峰の背に手を回した。


「…お前、これからそんな服着るの禁止な」

「似合いませんでしたか?」

「そうじゃねぇよ…似合ってる。けどな、」


そんな可愛いテツを俺以外に見せたくねぇ、とポツリと囁く。


「仕方のない人ですね…」


と、呟くと優しく啄む様なキスを交わした。



可愛い君は俺だけのモノ
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