「ソレ、やったの、誰だ?」
笑顔なのに冷めた声で問う赤司君は、僕から視線を外さない。
怖い、というよりもしまったという思いのほうが強い。
けれど赤司君は僕がいつまでも口を開かないとわかると、優しい笑みを向けた。(あ、ぁ…駄目だ)(…駄目)
「言わないならいい。自分で調べればいいからね」
「あ、赤司…君」
「大丈夫、テツヤは何も心配しなくていい」
ピリリッ、と感じた痛みに視線を向ければ今は服で隠れているけれど、痣の出来た場所を赤司君が触れていた。
少し触れられただけでこんなに痛みを感じるだなんて、と他人事の様に考えていると僅かな僕の表情の変化に赤司君は気付いた。
「痛むんだね」
「平気です」
「テツヤは頑固だな…」
手を上へやり僕の頬へ触れる赤司君は呆れたような笑みを向ける。
「…許せないな」
「……」
「僕のテツヤを傷つけるなんて」
その言葉に何も返せない僕に、まぁいいよ、と呟く。
どれだけ問われても僕が答えないのを分かってるからだ。
服の下に隠れている腹部に出来た痣は、レギュラー落ちした先輩がつけたものだった。
キセキの世代は認めているが才能のない僕がレギュラーなのが許せないらしく、僕に怒りをぶつけたのだ。
なんでお前なんかがレギュラーなんだ、と言われ蹴られた時は息が出来なくて苦しかった。
そして今度は先輩が手を振りかざそうとした瞬間、青峰君と緑間君が偶然やって来てその場はおさまった。
いや、よく考えれば青峰君と緑間君が偶然、来るなんておかしい。
先輩に呼び出されたのは校舎裏で人なんか滅多に来ない場所だ。
それに二人は僕がそこにいるとわかっていたような感じだった気がする。
青峰君は先輩に突っかかりそうだったけれど、それでも二人は妙に落ち着いていた。ような。
(いや…まさか)(そんな)
グルグルと混乱する僕をよそに赤司君はにっこりと、そう本当ににっこりと嫌な笑みを向けた。(ぁ、これ、は…)
「大丈夫。僕にわからないことなんて、ないから」
やはり赤司君には、初めからお見通しだったようだ。
君には一生逆らえない