赤司君の言葉は有無を言わせない絶対的な言葉だ。
けれど本当に赤司君の言う事は絶対で間違ったことなんて、一度もなかった。
でも、今回の場合はどうしたらいいのだろうか。
「テツヤ、好きだよ」
「……はあ」
「その顔はわかってないね」
クスリと笑う赤司君に対し僕は確かに意味が分からなくて、首を傾げた。(好き…好き、とは…?)
「僕も好きですよ」
「そうか、じゃあ僕たちは両想いって事になるね」
「りょう、おもい…??」
「そういう意味で好きって言ったんだよ」
「え、」
(そういう、意味…)
それは恋愛的な意味なのだろうか。
でも僕はそういう意味で好きだと言ったのではない。仲間として、キャプテンとしてそう言ったのだ。
グルグルと赤司君の言葉が頭を回り困惑している僕をよそに、赤司君はいつも通りの笑みを絶やさなかった。
「好きになるよ」
「…はい?」
「テツヤは必ず僕を好きになる」
あぁ、その自信はどこからくるのか。赤司君だから、と思えば納得しそうになる自分が怖い。
いや、現に赤司君の言葉を否定出来ない時点で、赤司君の言葉を認めてるのと同じだ。
「…ありえません」
「さぁ、それはどうかな」
「赤司君、茶化さないで下さい」
「茶化してないさ」
絶対テツヤは僕を好きになる、と囁いた声はやっぱりいつも通りで。(調子が狂います…)
「テツヤ」
「……」
「テツヤ、おいで」
赤司君は狡い。
逆らえない事を知っているのに、優しく呼ぶのだ。そんなの逆らえないに決まってる。
ゆっくりと赤司君に近付けばじれったかったのか、手を伸ばして僕を引っ張り一気に距離を近付けられた。
「いいね、その顔」
「…っ赤司君」
「誘ってるのか?」
「っ!?」
一瞬だったけれど唇と唇が触れて、僕を見た赤司君は笑みをより深くした。(今…、キス、され…た、?)
「テツヤは誘うのが上手だね」
「っあ、かし…くっ!」
そしてまた口付けられて、何度も何度も息も出来なくなる程、口付けられた。(意味が、わからない…)
赤司君にキスされている事も、嫌がらずに赤司君の事を受け入れている自分自身も。
けれど頭の隅で、もう逃げられないんだという事は確信できた。
(やっぱり…)
(赤司君は、狡いです…)
熱が冷めない