「はい、黒ちんにあげる」
ぽん、と手の上に乗せられたうまい棒を見て黒ちんが首を傾げる。
「…有難う、ございます」
「うん」
どうしてくれるのだろうか、という様な表情をしていたが素直にお礼を言ってふわりと微笑む黒ちんに俺もつい口許が緩む。(かわいーなぁ)
きっと何で俺がお菓子を黒ちんにあげたのか分かりもしないんだろうな、と思いいつになったら言おうかな、なんて考える。
それから毎日毎日、うまい棒や飴やチョコ等を黒ちんにあげた。
流石に一週間も続けてあげたからか黒ちんから、あの、と話を切り出してくれた。
「何だか毎日貰ってる気が…」
「いいのいいの。俺が黒ちんにあげたいだけだしー」
「でも、」
「黒ちんにだけだよ?」
「え?」
ニコリと微笑んで告げれば意味がわからなかったのか首を傾げられた。(鈍いなぁ)
一歩距離を縮めて、サラリと黒ちんの綺麗な髪に触れる。
丁度、今この更衣室には俺と黒ちんしか居ないので好都合だ。
「黒ちんだけ特別」
「あ、の…」
「俺、大事なお菓子は好きな人にしかあげてないんだよ」
「〜〜っ!」
グッ、と距離を一気に縮めて黒ちんが口を開く前に口付ける。
抵抗されるかも、と思ったけれど突然の事だったからかギュっと胸元の服を掴まれた。(やば…)(止まんなくなるじゃん)
「…は、っ紫…原く、ん…」
「奪っちゃったー…なんちゃって」
「っ、ふざけないで下さいっ」
「…じゃ、もう一回してもいいの?」
ふざけた表情から一変して、真剣な眼差しを向けてそう問えば潤んだ瞳が揺らいだ。
「ね、駄目?」
最後の一押しとばかりに首を傾げて聞けば、頬を朱に染めた黒ちんがポスリと俺の胸元に顔を埋めた。
「黒ちん」
「……」
「好き」
「……」
「大好きだよ」
ぎゅ、と抱きしめ言葉を紡ぎ最後に、黒ちんは俺の事好き?、と問う。
「キス、された時…」
「うん」
「嫌じゃ、なかったです」
「うん」
「寧ろ、嬉しい…というか、」
「…ほんとに?」
「はい、だから…」
僕も好きだと思います、と顔を上げた黒ちんは俺の大好きな柔らかい優しい微笑みだった。
君にだけ
特別なんだよ