「あらら〜?どうしようか、黒ちん」

「どうしましょうか」


試合の帰り道、袋に入れて持っていたお菓子を落としてしまい拾うのに立ち止まる。

丁度、隣を歩いていた黒ちんも立ち止まってくれて一緒に拾ってくれて助かったのだけれど、立ち上がって前を向けば他の皆がもうすでに居なかった。(あれー?)

とりあえず真っ直ぐだろう、と進んでいたけれど途中途中に分かれ道があり、こっちかな?あっちかな?、と黒ちんと言いながら歩いていたら余計に迷子になってしまった。


「あ、あそこコンビニあるー」

「そうですね」

「ちょっと休憩しない?」

「そうしましょうか」


コンビニを見付けて向かう時に黒ちんの手を繋ぐと、紫原君?、と首を傾げて此方を見つめてきたのでニッコリ微笑む。(上目遣い可愛い〜)


「迷子にならないように、ね〜」

「流石に目の前にあるコンビニまでで迷子にはなりませんよ」

「いいじゃん、いいじゃん」

「はぁ…もう、仕方ないですね」


そう言いつつも少し微笑んだ様に見えたのは自分の欲目なのか。そうじゃないのか。

俺の手よりも小さな手が握り返してくれて嬉しさに浸っていると、行きますよ、と言って引っ張ってくれたのでついて行く。


「ん〜、迷子もいいかもしんない」

「何言ってるんですか…赤司君に怒られますよ」

「赤ちんに怒られるのは嫌だけどー」


黒ちんと二人きりだからいいんじゃん、と言えば一呼吸置いて黒ちんが優しく微笑んでくれた。


「けど迷子も程々にしましょうね」

「うーん、努力するけど黒ちんには言われたくないし」

「ふふ、そうですね」


黒ちんの言葉にムスリと頬を膨らませて言えば、笑われたので顔を背ける。

機嫌を損ねたと思われたのか顔を覗き込んだ黒ちんに、アイス奢りますから機嫌直して下さいね、と言われたので、じゃあパピコ買って半分こしよーよ、と即座に答えた。



「あ、そういえば携帯で連絡取ればよかったですね」


コンビニから出てきた所で黒ちんがそう言ってカバンの奥から携帯を取り出そうとしていたけれど、その手を掴んで制止させる。


「紫原君?」

「アイス食べてからでいいじゃん」


でも、と口を開く黒ちんの唇に人指し指を当ててニッコリと微笑む。


「もうちょっと迷子を楽しもうよ、黒ちん」


もし少し二人きりで居たいから、とは言わずに悪戯っぽくそう言えば困った様に眉を下げたけれど最後には微笑んでくれた。


「今回だけですよ?」




迷子なのは
君との距離感

紫原は携帯の存在に始めから気付いてた確信犯です。

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