「こんな所にいたのか」
本に落としていた視線を上へ上げれば、机を挟んだ向かいに緑間君が立っていた。(こうやって見上げると)(本当におっきいですね…)
僕が、どうかしたんですか?、と聞けばその問いには応えず椅子を引き僕の向かいに座ってしまった。(…何なんでしょうか?)
「あの、…?」
「今日」
「はい?」
「今日のお前の星座は最下位だったのだよ」
「はあ」
だからなんだというのだろうか。
僕は占いとかは信じない方なので最下位だろうと気にしないのだけれど。(緑間君は異常だと)(僕は思ってますけどね)
気のない返事を返しているのに緑間君は気にしていないのか、視線をさ迷わせながらも口を開いた。
「今日の黒子のラッキーアイテムだが」
「はあ」
「バニラシェイクだそうだ」
「そう、ですか」
それならばいつも飲んでいるし、緑間君が気にしなくてもいいのではないだろうか。(今日も飲むつもりですし)
緑間君の意図がわからなくて首を傾げると、パチリと目が合った。
「奢ってやる」
「……はい?」
「奢ってやると言っているのだよ」
二回も言わなくてもわかっている。(失礼な人です)
僕が言葉の最後に疑問符がついてしまったのは聞き返したからではない。
奢ってやる、と言われた事に疑問を感じただけだ。
青峰君や黄瀬君にはよく奢って貰っているのだけれど、緑間君が奢ってくれるだなんて。(僕のラッキーアイテムなのに)
「どうして奢ってくれるんですか?」
「気にするな。お前は黙って奢られてたらいいのだよ」
「んー、まあそうですが」
視線を外して緑間君の手元に目を向ければ、ラッキーアイテムであろうウサギのぬいぐるみと目が合った。
それにしてもシュールだ。
中学男子でしかも背の高い人があんな可愛いウサギのぬいぐるみを大事そうに持っているのは。
「放課後、教室まで迎えに行くのだよ」
「あ、はい。待ってます」
カチャリと眼鏡を直して立ち上がった緑間君は、さっさと立ち去ってしまった。
「…バニラシェイク」
つい嬉しくて呟いた言葉だけれど、緑間君が奢ってくれる事に対してこんなにも嬉しいのか自分でもよくわからなかった。
(気のせいです)
(…気のせい)
今日の
蟹座の運勢は?ラッキーアイテムのウサギのぬいぐるみを持って気になるあの子を誘ってみよう!