「う〜〜寒いっスねぇ」
黄瀬君のその言葉に呆れて溜め息しか出なかった。
今日は急に冷え込むと昨日の夕方の天気予報から言っていたのに、黄瀬君はブレザーを忘れたらしくセーターだけしか温かい装備がない。
「どうしてちゃんと用意しなかったんですか…」
「えーっ、だって要らないと思ったっんスよー」
「だからってブレザー位は普通忘れませんよね」
「うっ…痛いとこ突かないで黒子っち!」
酷いっ、と呟いて僕に抱きついてくる。
今は下校時間の帰り道であり、僕達と同じ様に帰る生徒が多いのに、だ。(女の子からの視線が痛いです…)
「あー黒子っち温かい…」
「ちょっと…黄瀬君、離れて下さい」
「えーっ、寂しいっス!寒いっス!」
離れて欲しくないのは僕だってそうだけれど(恋人、ですし)寒いのは自業自得だ。
「分かりました。分かりましたから少しだけ離れて下さい」
「?はーい」
黄瀬君が離れて僕の様子を伺う中、僕は自分が着けていた長めのマフラーを一旦外しもう一度きちんと着けて余った分を黄瀬君の首に巻いた。
「え、えっ!?黒子っち!?」
「これでどうですか?」
ほんのりと頬を赤く染めて慌てる黄瀬君をよそに、にっこりと微笑むと手を握られた。
「へへっ…嬉しいっス!」
「じゃあシェイクでも奢って下さい」
「この寒い中、飲むんっスか?」
「シェイクは一日一回は飲まないとっ」
「ははっ、何スかそれ〜」
手を握ったまま他愛もない会話をして歩き出すと、ふと黄瀬君が言葉を切り出した。
「そういえば、このマフラー何でこんなに長いんスか?」
「桃井さんからの手作りマフラーです」
「桃っち…不器用っスからねぇ」
道理で、と呆れて納得した黄瀬君だけれど何故かまたニコニコ笑顔になった。
「けど、まぁこの長いマフラーのお陰で黒子っちとこんな事出来たし!」
またしよーね、と黄瀬君の肯定の言い方に「仕方ないですね」と言ったけれどまた出来るという喜びに想いを馳せた。
今感じているこの想いに身を寄せて