すごい人に会いました
「着いたぁ〜」
歩くこと約数刻、ようやく町に到着したおれと雷ぞ…雷子。
「じゃあ、お互い頑張ろうね」
「うん。また学園で」
ばいば〜い、と手を振りあって別れる。
よし、ここからが本番だ。
気合い入れていくぞ〜!と町の中を歩く。ちなみに、今の時刻はだいたいお昼前あたりだ。時間はたっぷりあるし、適当に歩いてればいっかなぁ。
***
「う〜、どうしよう」
しばらくお店とか(甘味処ばっかり)をぶらぶら歩いたけど、誰にも声をかけてもらえなかった。もしかして、おれの顔があまりにも酷いからなのかな…。
「とりあえずお腹空いたから何か食べよう…」
腹が減っては戦はできぬって言うもんね。うん。
おれは甘味処へと歩き始める。
今日は、最近噂の中村堂で三色団子でも食べようかなぁ。
ん〜、でも餡蜜も捨てがたいし、どら焼きも美味しいって聞くしなぁ。
「どうしようかな。…うべ!」
考えていたら、柄の悪い人にぶつかってしまった。考え事をして人に気づかないなんて、まだまだだなぁ。
少し反省していると、男の人に怒鳴られた。
「おいねえちゃん、人にぶつかっておいて謝りもしねぇのか?」
「…すいませんでした」
「なんだ、その謝り方は。もっと心を込めて謝らねえか!」
…面倒な人に捕まったなぁ。この格好じゃあ戦えないし、逃げた方がいいかな?
「ねえちゃん、逃げようったってそうはいかねえぞ?」
逃げようとした途端に、腕を掴まれる。
うっ、普通の人だと思って油断してた…。
しょうがない。
「やりますか」
「何か言っ…!」
おれが補習覚悟で投げとばそうとしたら、男の人が吹っ飛んだ。そりゃあもう盛大に。
あれ?おれまだ何にもしてないよ?
いきなりのことで、ちょっと固まったけど直ぐに男の人が飛んだ原因を見る。
「いかんいかん、加減するのを忘れていた!」
ハハハっと豪快に笑うその人の顔は、太陽みたいな温かいものだった。
「おーい大丈夫かー?」
倒れている男の人の息を確かめるお兄さん。
凄い!おれもいつか人を吹っ飛ばせるようになりたい!
「気絶しているな!お嬢さん、大丈夫だったか?」
男の人の息を確認したお兄さんは、おれに話しかける。
「だっ、大丈夫です!ありがとうございました!」
「そうか!それはよかった!」
優しいなぁ、お兄さん。そうだ、何かお礼しなくちゃ!
おれの頭の中からは、実習のことなんてきれいさっぱり消えていた。