先輩と鍛錬します
「もんじ先輩、よろしくお願いします」

剣術に比べ体術が苦手なおれに、もんじ先輩は組手の稽古をつけてくれることになった。
裏山の開けた場所に出ると、互いに向き合って一礼する。

「おう。お前の準備が整ったらいつでもこい」

「はい!」

実を言うと、おれは一対一の組手は苦手。でも、平地ではないところーー木が生い茂っていたり、岩が多い場所、足場が不安定な場所とかーーは、誤魔化しが効く。でも、ここは周りに何もない場所だ。
もんじ先輩もわかっててここにくるんだもんなー。まあ、おれのことを考えてくれているってことだから嬉しいんだけどさー。
深呼吸をしてからすっと息を詰める。
先輩の懐に潜り込み、脇腹に拳を叩き込もうとしたが、先輩の手によって防がれてしまった。

急いで後ろに飛ぼうとしたが、先輩の方が一枚上手だ。素早くおれの手首を掴むとそのまま地面に叩きつけようとしてきた。慌てて受け身をとって起き上がると、それも予測していたのか足払いをされてしまった。
そして、先輩は倒れたおれの上にまたがりおれの首に手を当てた。勝負がついた。
悔しい。

「まいりました」

立ち上がる時に微かに足首に痛みを感じた。うわー、ひねっちゃったかなぁ。あとで保健室に行こう。新野先生いるといいなぁ。

「逢川、お前足を捻っただろう。ちょっと見せてみろ」

「……バレてました? なんでわかったんです?」

「立ち上がる時に顔に変化があった。それに、無意識に捻った足をかばった立ち方をしている」

全部お見通しだったかぁ。さすが先輩。
おれが自分の未熟さを反省をしていると、先輩がこちらに背を向けてしゃがみこんだ。

「もんじ先輩?どうしたんですか?」

「足が痛いんだろう? おぶってやるから早く乗れ」

「大丈夫ですよー。歩けますって」

「ばかたれ、悪化したらどうするんだ。五年は近々長期の実習があるんだろう? それまでに治らなかったら出来ることも出来んではないか」

だから早く乗れ、と先輩は催促する。優しいなぁ。ここはお言葉に甘えようかな。
先輩におぶってもらうのは久しぶりだなあ。下級生の頃は委員会についていけないおれをよく先輩がおぶってくれてたなあ。おれと一つしか年が変わらないのに、力強くてかっこいい背中だった。
ついあの頃のことを思い出して笑ってしまった。ふふふと口から漏れ出る。


「何がおかしいんだ?」

「いやあ、昔はよくこうやっておんぶしてもらっていたなあと。懐かしくなっちゃって」

「お前はいつまでたっても変わらんな」

「ええー、変わってますよ〜」

ひどーい。と言って先輩の首に抱きつく。
あー、幸せだなあ。
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