五年会議
春が「鍛錬してくるー」といって部屋を出て行った後、五年生のいつもの面々が続々と集まって来た。あいつは鍛錬に行くとしばらくは帰ってこない。おそらく、今日の午前中は授業が休みだから昼まではずっと外に行っているだろう。

「三郎から大体話は聞いたけど、七松先輩の様子がおかしいんだって?」

各委員会の委員長と委員長代理が集まる席にいなかった雷蔵は訝しげな顔で聞いてきた。
まあ、いつも元気が有り余っている先輩だからな。信じられなくても無理はない。

「本当だよ。なんかずっとふわふわした感じで」

「心ここにあらずといった様子だったな」

勘右衛門の言葉を兵助が引き継ぐ。
ひとり神妙な顔をして考えていた三郎が口を開く。

「ハチ、春は町に出たときに男に助けられたって言っていたんだよな」

「ん? ああ、たしか春に絡んでいたやつをぶっ飛ばしてたって言ってたけど」

「あの時六年は長期の実習が終わったばかりで1日休みだったらしい。潮江先輩の話によると、七松先輩はその日、町に出かけていたそうだ」

その言葉に、みんなが戦慄する。

「や、でもさ! そんな偶然なかなかないし、違う人だよきっと」

「でも、人をぶっ飛ばすほどの奴が七松先輩以外にいると思うか?」

勘右衛門が青い顔で否定するが、兵助がそう呟くと言葉に詰まってしまった。

「いや、きっといるよ! うん! すごい力自慢の人とか!」

雷蔵。さすがに無理があるんじゃねえか?
……ちょっと待て、そういえば、

「春を助けたやつの名前、たしか七松って名前だった気が」

「は? なにそれ!? 決定的じゃん! 早く言ってよ! これだからハチはハチなんだよ」

俺だから俺ってなんだよ!!

「……これはもう決定だな。これからはもっと警戒しておかないと」

三郎の言葉に皆が頷く。

「はぁ」

誰がついたとも知れないため息がこれからの苦労を物語っていたのだった。


(てことは、もしかしてあの組紐を春にあげたのって……七松先輩!? 絶対に春を見せないようにしよう。うん)
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