同級生の様子がおかしい
「おい、ちゃんと話聞いてんのか? 小平太」

部屋にいる五人の視線が小平太に集まる中、当の本人は心ここに在らずといった様子でああ、と生返事をしやがった。委員長の報告会だというのに、ろくに喋りもしねぇ。

「七松先輩。四年の滝夜叉丸が次の委員会のことで少し話があるようですよ」

「……鉢屋か。ありがとう。じゃあ私は抜けるぞ」

あの小平太が側に来た鉢屋に気付かなかっただと? それにいつもならお決まりの文句を叫びながら走って行くというのに、今日はどこかふわふわした足取りだ。やっぱりおかしいな、あいつ。

「七松先輩何か悪いものでも食ったんですか?」

「いや、さすがの小平太でもそれはないだろう」

鉢屋に仙蔵、失礼だぞ。
けど、本当にどうしたんだ? この間町に行ってからずっとあんな感じだ。

「僕、分かっちゃったかもしれない」

伊作がひらめいた! という顔をして言う。

「小平太さ、この間町から帰ってきてすぐ僕の所へ相談に来たんだよね」

「あの小平太が相談? 細かいことは気にしないあいつが?」

「もう、本当だってば! でね、なんか帰ってきてからずっと胸のあたりが苦しいんだって。話を聞いていくとどうやらある女の人に会ってからずっとらしくて」

この話の流れからするともしかして小平太のやつ……いや、あいつに限ってそんなわけねえだろ。

「それってさ、恋だよ!」

ねえ、仙蔵もそう思うでしょ?
伊作、仙蔵に振るのはやめといた方がいいと思うぞ。
ほれ見ろ、楽しそうな顔しやがって。何かやらかすつもりだぞ、あいつ。

「恋ぃ? 小平太が? 伊作の思い違いじゃねぇのか?」

「留三郎と同じ意見なのは癪だが、俺もそう思う」

あの馬鹿と同じなのは本当に嫌だがな。

「そうかなぁ」

「…………しばらくは、様子見でいいと思う…………」

長次の言葉にみんな頷く。
五年の奴らが妙に大人しいのが気になるが、まあ小平太の様子なんて五年が気にする義理もねぇか。

「それではこれで解散ということでよろしいですね」

鉢屋の言葉で六年がぞろぞろと部屋を出て行く。俺はというと、鍛錬でもしようかと裏山の方へ向かっていた。

「せんぱーい、 今から鍛錬ですかー?」

「逢川か」

どこからか走ってきた逢川が俺に飛びつく。毎回毎回こいつは……、その癖どうにかならんのか。

「おれも一緒にしたいです」

いいですか? と俺を見上げて言う逢川。なんだかんだ言っても可愛い後輩だ。いいぞと声を掛けようとした瞬間に、逢川が俺の胸元に顔を押し付けてくる。

「先輩の匂いだー。落ち着くー」

猫みたいなこいつの頭を撫でながら鍛錬の計画を立てていた俺は、小平太の変化のことは忘れていた。

(先輩、今日は何するんです?)
(取り敢えずお前は俺から離れろ)
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