不思議な夢を見ました。どんな夢? まぐろくんが居て。うん。二人で一緒に、きらきらした場所を歩いていて、宇宙みたいなところ、真っ暗だけど怖くない。綺麗なところだね。そうです、本当に綺麗でした、だからとても楽しくて。歩くのが? そうです、いや、違います。違うの?
「まぐろくん」
「なんだい、りんごちゃん★」
 今日も夢を見ました。
 まぐろくんはどんな夢を見ましたか?
 あの子もそんな夢を見るのでしょうか。
「やっぱり、なんでもありません」
「そっか★」
 少し前から、同じ夢を何度か見ていました。その夢を見た日は決まって、ある女の子のことを思い出します。話したことは無いけれど、名前を知っているあの子。
「ねえ、りんごちゃん★」
「なんでしょう、まぐろくん」
「なにか、嫌なことでもあった?」
「嫌なこと……嫌ではないです。でも、とても難しい問題に出会ってしまいました」
「難しい問題?」
「そうです」
「それは、りんごちゃんが一人で考えなきゃいけない問題、なのかな?」
「はい。これは経験というより、伝え聞いた話から導いた結論ですが、どうやらその通り、私にしか答えが出せない問いのようです」
「それは大変、だね★」
「大変です。とってもとっても、大変です」
 まぐろくんに言えないことがある、という事実がもどかしいのです。問いに対する答えを導き出せない苦しさよりも、そのもどかしさがなにより重くのし掛かっています。あの女の子もこんな気持ちだったのでしょうか。でも少し違う気もします。
 聞いてみようと思ったこともありました。しかしあの時言わなかったまぐろくんの思いを私はないがしろにしたくありません。きっとまぐろくんは私が勘づいていることにも気付いていることでしょう。それでも彼は言いませんでした。名前だけ知っている女の子のために。私のために。 私はあの時、かわいらしい女の子が泣いていた姿も見てしまったのです。
 夢の中の宇宙には私とまぐろくんの二人だけしかいません。広大な、しかし荘厳さよりも親しみを感じるその場所で、気にするものはなにもありません。私がいて、まぐろくんがいる。無数の星が瞬いて、それはそれは幻想的な世界でした。きっとまぐろくんもこの世界を知っています。知っているからこそ言わなかったのでしょう。言えばあの女の子は広い宇宙で一人迷子になってしまう。一歩間違えば巨大なスーパーノヴァが起こって、宇宙そのものが終焉を迎えていたかもしれません。彼ならばそこまで考えていたでしょう。まぐろくんの方が私よりずっとずっと頭がいい。
 私はまぶたの裏側に広がる世界で、まぐろくんと一緒に綺麗なところを歩くのが楽しかったのです。私はいつまでこの夢を見ていられるのでしょう。貴方はどんな夢を見ているのでしょう。





願わくは同じ夢を
150225 あんどうとささき



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