猫が夜空で笑ったとでもいうのか。
 くらくらと目眩がしたが、ありったけの神経を総動員してどうにか両足を踏み留めさせる。手に負えないと思ったことは何度もあった。しかし今回はもう、お手上げだ。
 妖精のフリをした蜉蝣が飛び回り、金色の粉を振り撒いてきらきらきらきら、ああ鬱陶しい! 丸いオレンジがころころと転がり彼女の足にぶつかって止まった。それを合図に彼女が腹の中で飼っていたサーカスが行進を始める。ギロチンのような笛の音が辺りをつんざいて大太鼓が火山を噴火させる。金管楽器の悲鳴が橋を呑み込む。ああ、ああ、頭が割れる!
 ピエロのお手玉が花火になって飛び回る。曲芸師はライオンの口の中で欠伸をして、猛獣使いがゾウに放り投げられた! 仮面を着けたバレリーナが両手にトゥシューズを履き逆立ちで歩く。氷漬けの人魚がまばたきをした。シルクハットの団長はそれを見てげらげらと笑っている。
 スカートを翻して彼女はしあわせそうに笑う。その憎たらしい真っ白な花びらにナイフを投げれば、ズサリと破けてぱっくり口を開いた。しかし血は流れない。しかし黒い目玉はこちらを見ている。それを愛しそうに撫でたのでとっさに掴んだ彼女の手は、低体温の僕には焼けるように熱かった。





パレード
120116



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -