頭が痛い。ぐらぐらと揺さぶられている感覚。誰かに脳みそを振り回されているような。一筋の細い黄色が頭蓋骨を貫く。やたら大きな動きをしている心臓が皮膚を叩く。足元が覚束ない。平衡感覚が失われている。俺の脚は真っ直ぐに歩く方法を忘れてしまったらしい。
どん、頭に鈍い痛みを感じる。どこかの壁にぶつかったのだろう。そのまま両手をつくと、途端に脚の力が抜けた。
黄色が波打って耳鳴りがうるさい。それよりも、さっきからずっと聞こえている笑い声の方が邪魔だ。神経を逆撫でする、鬱陶しいほど甲高い声。それは俺の周りをぐるぐると飛び回っている。
壁に背を向けて寄りかかる。指先に柔らかい物体が触れているのが分かった。ゆっくりとそれを顔の前まで持ち上げる。焦点の合わない視界に入ったそれは、小さく白い羽根だった。
「それは誰の羽根だろうなア」
三日月よりもにんまりと笑った奴が俺の前に突然現れそう言った。払い除けると奴は消滅し、笑い声だけがまたぐるぐると飛び回り始める。脳を拳骨でめちゃめちゃに弄繰り回されるような痛みが走った。うるさい笑い声を聞くまいと、掌で耳を押さえて頭を抱え込む。邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ。黄色も笑い声も頭痛も、何もかも邪魔だ。
何かが俺に降りかかっている。ふわふわと軽いなにか。まさか、と思って顔を上げる。それは紛れもなく、大量の白い羽根だった。
落ちている数枚を握りつぶして、投げ捨てた。
「俺の何が間違ってるっていうんだ!」
笑い声が止んだ。
黄色が消えた。
頭痛が治まった。

俺のすぐ横に奴の顔があった。
「アハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
今までとは比べ物にならない大きさの声が直接響いてくる。太く黄色い槍が頭を貫いた。頭が破裂しそうだ。奴の翼だって白くなんてないことを俺は知っている。





ルシフェルは白い翼がご自慢
111028




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