さらさらさら。
 流れていた。

 彼女はソファに身を沈めている。
 彼女は昔話をしている。
 さらさらさら。

 時折彼女のまつげが揺れる。
 長くて整ったまつげ。
 チャームポイントを尋ねられると、彼女は必ずまつげよ、と答える。
 付け睫なんて彼女には必要無い。
 自慢のまつげが揺れる。
 さらさらさら。

 彼女のまつげに飾りは要らない。
 それなのに今日の彼女はまつげに飾りを乗せている。
 それもきれいな飾りだけれど、僕はそのままのまつげの方が好きだ。
 さらさらさら。

 さらさらさら。
 流れは止まらない。止まってくれない。
 さらさらさら。
 それもまたきれいだ、と思ってしまう僕がいる。
 さらさらさら。
 彼女の髪を掬う。同じ音がした。

 さらさらさら。
 さらさらさら。

 君のまつげが好きだ。
 君の自慢のまつげが好きだ。
 飾りを乗せているまつげも嫌いじゃない。
 だけど本当は、誰も気付かない、君さえも気付いていない、自慢のまつげよりもきれいな君の瞳が好きなんだ。

 だからどうか、君の澄んだ瞳を僕に見せて。





さめざめと
110804



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