「え、何?・・・・鳥?!」
その落ちてきたものをよく見れば、大きな鳥だった。こんな鳥が普通にいるわけがない・・・・・ということは・・・・
「ライダー・・・・・」
隣にいるアーチャーのマスターが苦虫を噛み潰したような顔で倒れている鳥を見つめていれば、「いてててて・・・・」と鳥の影から誰かが出てきた。
「ボク、今日はついてないな・・・・」
そう言って上半身を起こした不思議な格好をした女の子は私たちの姿を見て困ったように眉を下げた。
「ライダー無事か?!」
「なんとか・・・・・」
立ち上がったライダーはヘラヘラした表情で自分のことを追いかけてきた人に返事をした。声からして恐らく男性だろうけど、その姿はマントで隠れており、鼻のあたりまであるフードをかぶっているため顔までは確認できなかった。
「なんだてめぇら」
アーチャーとの戦いを邪魔されたセイバーはイライラした様子で突然現れたライダーとマスターのことを睨みつけた。
「よりによってこんな時に現れるなんて空気読めねぇな」
アーチャーも困った顔を浮かべながらライダーたちのことを見つめた。
「おい、アーチャー。お前と早く決着をつけてぇが、あいつが邪魔だ。先にあいつを仕留めてぇ」
「奇遇だな、俺も同じことを考えていた。でも気をつけろセイバー。厄介なのはライダーじゃなくてマスターの方だ」
「あ?」
「俺は昨日あのマスターの策にやられそうになったんだ。魔力も相当なもんだし、魔術も・・・・・」
「お取り込みの所悪いが、君たち全員この場から早く離れた方がいい。早急にだ!」
セイバーとアーチャーが共闘してライダーを倒そうと目論んでいれば、ライダーのマスターは慌てたように私たちに声をかけてきた。
「えっ?」
離れた方がいいって一体・・・・と考えていれば、頭上から何か呻き声が聞えてきた。
「この声は一体!あんたたち何を連れてきたっ!」
ドオオオオオン!
「きゃあ!」
アーチャーのマスターの言葉にかぶるように何か巨大な物が空から降ってきた。さっきライダーが落ちてきた音とは比にならないぐらいの大きな音に驚いた私は恐怖で体が固まった。
「マスター大丈夫か?!」
「あ・・・・あ・・・・」
私の悲鳴を聞いて安否を確認するためにセイバーが声をかけてたが、私は何も答えることができなかった。
「こいつは・・・・・」
「とんでもねぇもん連れてきやがったな!ライダー!」
「■■■■■ーーー!!」
「バーサーカー・・・・」
遠くを見ればアーチャーのマスターが驚いた顔のまま固まっていた。あれがバーサーカー・・・・今まで人型のサーヴァントしか見てこなかったからあんな恐ろしいものが目の前にいることに私は恐怖を感じた。
「悪いな。昨日手負いにしたお前を仕留めようと探していたら突然バーサーカーに襲われたんだ。お前たちを巻き込む気はなかったんだが、申し訳ない。こうなった以上早く逃げてくれ!」
ライダーのマスターはここに辿り着いた経緯を話しながらも早くここから逃げるように私たちを促した。
「んなこと言ったって、今あいつに背を向けられる状態じゃねぇだろ!」
バーサーカーを見て再度剣を構えたセイバーに「同感だな」と言いながらアーチャーも弓を構えた。
「マスター動けるか?!俺たちがバーサーカーを相手にしてるうちにそのばあさんと一緒に逃げろ!いいな!」
セイバーは剣を構えながらバーサーカーから目を離さずに私に声をかけた。
「でも!それだと!」
「今だけは俺の言う事聞け!いいな?!」
「セイバー・・・・・」
「アーチャー・・・・いけるかい?」
「大事なマスターのためだいかなきゃいけねぇだろ」
アーチャーはマスターを安心させるように笑顔でマスターを見つめた。あんなすごいサーヴァントと戦うだなんて足がすくんでしまうに決まってる。だけど、今セイバーもアーチャーも私たちマスターのためにその恐怖を拭い去って戦おうとしてくれてる。それに応えるためには・・・・
「逃げましょう」
アーチャーを置いていくことに戸惑いを見せるマスターの腕を私はガシっと力強く握り締めた。
「あんた・・・・・」
「あそこのドアから下に下がれるはずです。建物が崩れる前に下に行きましょう!」
私がマスターの腕を引っ張って下の階へと続くドアへ向かおうとすれば、その姿を見たセイバーは「いくぞ、アーチャー!」と叫びながらバーサーカーへと突っ込んでいった。
「あぁ!せぇいっ!」
「ライダー援護だ!」
「よしっ!いくぞー!」
バーサーカーが体ほどの大きな斧をセイバーに振り下ろしたが、セイバーはその攻撃を寸での所でかわし、その次に連続で繰り出された攻撃も紙一重のところでかわし続けた。その隙を狙ってアーチャーはバーサーカーに何本もの矢を射ったが、セイバーに攻撃をしながらもその矢を全て斧で弾きとばした。ライダーは背後から鳥に乗って突っ込んできたが、背に武器が刺さろうとした瞬間、セイバーを攻撃していたバーサーカーは一瞬ぐるんと背後を振り向きライダーを斧で弾き飛ばした。
「うわあああああ!」
「っく。こいつバケモノか!」
攻撃をかわし続けているセイバーはなんとか隙をみて攻撃しようと考えているが、避けるだけで精一杯で攻撃しにいけないことにイライラしていた。
「セイバー無茶すんな!下がれ!」
「下がるにも、攻撃がおさまらねぇから下がれねぇんだよ!・・・っ!!」
アーチャーがセイバーの限界を感じて一度下がるように命じたが下がる隙も与えないバーサーカーの攻撃にセイバーは焦りを感じて後ろに飛びながら斧の攻撃を受け止めればその体は勢いよく遠くに吹き飛ばされた。
「セイバー!すみません、先に下に行っててください!」
「ちょっとあんた!」
勢いよく吹き飛ばされたセイバーの姿を見て私はいてもたってもいられなくなり、アーチャーのマスターに先に逃げるように指示をしてセイバーの元へと急いで駆け寄った。
「セイバー!大丈夫!?」
駆け寄りセイバーの前にしゃがみこめば、セイバーは咳き込みながら口から血を吐き出した。
「ほんとお前は・・・・昔から・・・・俺の言う事全然聞かねぇな」
目が少しうつろになりながら痛むお腹を押さえて息絶え絶えに口を開いたセイバーの言葉に、昔から?と何かひっかかりながらも、どこかケガをしていないか確認すれば、斧自体は剣で受け止めきれたらしく、切られたような傷はどこにも見当たらなかった。
「セイバー!ごめん!私の血をっ!」
「アーチャー!危ない!」
セイバーに私の血を飲んでもらおうと腕を差し出そうとすれば、アーチャーのマスターの焦った声が聞えてきた。後ろをみるとバーサーカーの斧が振り下ろされそうになっているアーチャーの前にマスターが出てなにか魔術を唱えた後にアーチャーを後ろに突き飛ばした。アーチャーは尻もちをつくように後ろに倒れこみ、マスターもその上に一緒に倒れていた。マスターの魔術によってさっきのバーサーカーの攻撃は見えない壁のようなものに弾き飛ばされ、2人に攻撃が当たることはなかったが、それは一瞬の出来事だった・・・・・
「っ!マスター!!」
すぐに壊された壁に瞬時に気づき急いで立ち上がったアーチャーはマスターの前に立ちバーサーカーの攻撃を受け止めたが
「がはっ!」
「アーチャー!」
その攻撃を受け止めきれず、アーチャーの体は勢いよく吹き飛ばされた。
「■■■■■ーーー!!」
アーチャーが目の前から消えたバーサーカーはその後ろにいたマスターを完全にロックオンした。まずい、このままだと殺されてしまう!
「逃げて!!」
私は立ち上がり精一杯の大きな声を出してマスターに向かって叫んだが、マスターは逃げれないと覚悟したのか魔術を唱える構えをした。このままでは!このままでは・・・・!
「■■■■■ーーー!!」
「僕のこと忘れないでもらえるかな!これでもシャルルマーニュ十二勇士の一人なんだよ!」
後ろから勢いよく突っ込んできたライダーの武器がようやくバーサーカーの背中に刺さった。やっと攻撃が効いた。と喜ぶのもつかの間、雄たけびを上げたバーサーカーの声によって発生した風でふらついたライダーの隙をついて、バーサーカーが勢いよく斧を横に振り払いライダーの体は再び飛ばされそうになった。しかし、一瞬オレンジ色に体が光ったライダーは、斧の攻撃を武器で受け止めた。みんなが吹き飛ばされるぐらいの破壊力のはずなのになんで・・・・とその光景を見ていれば、ライダーの方に片手を伸ばしているライダーのマスターの姿が目に入った。フードに隠れて表情は見えないが、震えている腕をもう片方の手で必死に押さえ込んでいてとても苦しそうだった。
「今のうちだ!セイバーのマスター!アーチャーのマスター!自分のサーヴァントを連れて逃げろ!」
「えっ!」
「早くしてくれ!いつまでこれが持つかわからない!」
必死にこちらに叫び続けるライダーのマスターの言葉を聞いて、私はセイバーの腕を肩に回して起き上がらせようとしたが、鎧の重さもあって中々立ち上がらせることができなかった。せっかくみんなが頑張ってくれているのにこんな所でへばってられない!
「ぁぁああああ!」
大声を出しながら体に力を入れてなんとかセイバーを引き上げた。膝がガクガクするけどそんなの気にしてられない。このまま一気にドアまで行かなきゃ。
「セイバー、今助けてあげるから待ってて!」
荒い呼吸しか聞えてこないセイバーに話しかけながらドアの方まで歩いていると、「うわあああ!」というライダーの声と苦しげな声を出すライダーのマスターの声が聞えてきた。声のした方を振り返れば、ライダーがボロボロになった状態で自分のマスターの上に倒れていた。恐らくバーサーカーに吹き飛ばされたのだろう。バーサーカー以外のサーヴァントはみんな瀕死状態だし、マスターたちも疲労困憊だ。それに、私は魔術師として何の役にも立てないし、どうしたら・・・・・。
「■■■■■ーーー!!」
バーサーカーからまた聞えてきた雄たけびに一気に思考が引き戻され、バーサーカーが次に誰をターゲットとしてロックオンしたのかがわかった。
「後ろ!避けて!」
喉が張り裂けそうになるぐらいの叫び声でアーチャーの元へと走っているマスターに声をかけたが、アーチャーのマスターが私の声を聞いてこちらに振り向いた時にはすでに背後にバーサーカーの姿があった。間に合わない!そう思った私は、これから起きる最悪な場面から目を背けるように地面へと視線を下げたが、「させるかよ!」という声と一緒に抱えていたセイバーの体が大きく動き、えっ?とセイバーの方を見たのと同時に「■■■■■ーーー!!」という苦しそうな声がバーサーカーから聞えてきた。一体なにが。と思いバーサーカーを見れば、背中には見慣れた剣が突き刺さっていた。
「あれは・・・・セイバーの剣・・・・」
バーサーカーの背中に刺さっているのが、セイバーの剣だと気づき横を見れば、「ざまぁ見やがれ」と荒い呼吸を繰り返したままのセイバーが親指を下に向けていた。この距離で剣を投げるだなんて・・・・と信じられない光景にただただ驚いていたが、背中に刺さったセイバーの剣を自分で抜いたバーサーカーはその剣を握ったまま私たちの方へと走ってきて剣を振り下ろしてきた。
「マスター!危ねぇ!」
私を守るように抱きしめたセイバーはそのまま私と一緒に地面へと転がった。
「っ・・・・・いたい・・・・」
セイバーが守ってくれたから直で地面に倒れることはなかったが、何回もゴロゴロと体が回転したため体の所々が痛かった。抱きしめたまま私の上に乗っかっているセイバーの体を横にずらしながら上半身を起こせば、手にべったりと血が付いているのがわかった。
「せ、セイバー!!」
わき腹をえぐるように斬られているセイバーを見て、私は慌ててセイバーの体を抱き抱えた。わき腹からは血がとめどなく溢れていて、セイバーは声も出さずに荒い呼吸を繰り返していた。
「セイバー!セイバー!!お願い!血止まって!」
私は目からとめどなく溢れてきた涙を拭う余裕さえなくただただセイバーの傷を手で覆った。バーサーカーはすぐにセイバーが死ぬと核心したのか再び私たちへの興味をなくしアーチャーのマスターへと攻撃をしようとした。アーチャーに回復魔術を使っている最中だったマスターはその気配に気づいているが手を止められずにいた。みんながこんなにも頑張って戦っているのに・・・・・私は覚悟を決めてバーサーカーが捨てていったセイバーの剣を握り締めて自分の腕を斬り矢と弓を手に取った。
「許さない!バーサーカー!!」
私の手から放たれた矢は勢いよくバーサーカーへと飛んでいき肩に命中した。バーサーカーにとっては虫にさされたような痛みだっただろうが効果はあったようでまた私の方へと方向転換をして向かってきた。怖いけどそんなこと言ってられない。大切な人がこんなに傷つけられたんだ。絶対に許さない。
その落ちてきたものをよく見れば、大きな鳥だった。こんな鳥が普通にいるわけがない・・・・・ということは・・・・
「ライダー・・・・・」
隣にいるアーチャーのマスターが苦虫を噛み潰したような顔で倒れている鳥を見つめていれば、「いてててて・・・・」と鳥の影から誰かが出てきた。
「ボク、今日はついてないな・・・・」
そう言って上半身を起こした不思議な格好をした女の子は私たちの姿を見て困ったように眉を下げた。
「ライダー無事か?!」
「なんとか・・・・・」
立ち上がったライダーはヘラヘラした表情で自分のことを追いかけてきた人に返事をした。声からして恐らく男性だろうけど、その姿はマントで隠れており、鼻のあたりまであるフードをかぶっているため顔までは確認できなかった。
「なんだてめぇら」
アーチャーとの戦いを邪魔されたセイバーはイライラした様子で突然現れたライダーとマスターのことを睨みつけた。
「よりによってこんな時に現れるなんて空気読めねぇな」
アーチャーも困った顔を浮かべながらライダーたちのことを見つめた。
「おい、アーチャー。お前と早く決着をつけてぇが、あいつが邪魔だ。先にあいつを仕留めてぇ」
「奇遇だな、俺も同じことを考えていた。でも気をつけろセイバー。厄介なのはライダーじゃなくてマスターの方だ」
「あ?」
「俺は昨日あのマスターの策にやられそうになったんだ。魔力も相当なもんだし、魔術も・・・・・」
「お取り込みの所悪いが、君たち全員この場から早く離れた方がいい。早急にだ!」
セイバーとアーチャーが共闘してライダーを倒そうと目論んでいれば、ライダーのマスターは慌てたように私たちに声をかけてきた。
「えっ?」
離れた方がいいって一体・・・・と考えていれば、頭上から何か呻き声が聞えてきた。
「この声は一体!あんたたち何を連れてきたっ!」
ドオオオオオン!
「きゃあ!」
アーチャーのマスターの言葉にかぶるように何か巨大な物が空から降ってきた。さっきライダーが落ちてきた音とは比にならないぐらいの大きな音に驚いた私は恐怖で体が固まった。
「マスター大丈夫か?!」
「あ・・・・あ・・・・」
私の悲鳴を聞いて安否を確認するためにセイバーが声をかけてたが、私は何も答えることができなかった。
「こいつは・・・・・」
「とんでもねぇもん連れてきやがったな!ライダー!」
「■■■■■ーーー!!」
「バーサーカー・・・・」
遠くを見ればアーチャーのマスターが驚いた顔のまま固まっていた。あれがバーサーカー・・・・今まで人型のサーヴァントしか見てこなかったからあんな恐ろしいものが目の前にいることに私は恐怖を感じた。
「悪いな。昨日手負いにしたお前を仕留めようと探していたら突然バーサーカーに襲われたんだ。お前たちを巻き込む気はなかったんだが、申し訳ない。こうなった以上早く逃げてくれ!」
ライダーのマスターはここに辿り着いた経緯を話しながらも早くここから逃げるように私たちを促した。
「んなこと言ったって、今あいつに背を向けられる状態じゃねぇだろ!」
バーサーカーを見て再度剣を構えたセイバーに「同感だな」と言いながらアーチャーも弓を構えた。
「マスター動けるか?!俺たちがバーサーカーを相手にしてるうちにそのばあさんと一緒に逃げろ!いいな!」
セイバーは剣を構えながらバーサーカーから目を離さずに私に声をかけた。
「でも!それだと!」
「今だけは俺の言う事聞け!いいな?!」
「セイバー・・・・・」
「アーチャー・・・・いけるかい?」
「大事なマスターのためだいかなきゃいけねぇだろ」
アーチャーはマスターを安心させるように笑顔でマスターを見つめた。あんなすごいサーヴァントと戦うだなんて足がすくんでしまうに決まってる。だけど、今セイバーもアーチャーも私たちマスターのためにその恐怖を拭い去って戦おうとしてくれてる。それに応えるためには・・・・
「逃げましょう」
アーチャーを置いていくことに戸惑いを見せるマスターの腕を私はガシっと力強く握り締めた。
「あんた・・・・・」
「あそこのドアから下に下がれるはずです。建物が崩れる前に下に行きましょう!」
私がマスターの腕を引っ張って下の階へと続くドアへ向かおうとすれば、その姿を見たセイバーは「いくぞ、アーチャー!」と叫びながらバーサーカーへと突っ込んでいった。
「あぁ!せぇいっ!」
「ライダー援護だ!」
「よしっ!いくぞー!」
バーサーカーが体ほどの大きな斧をセイバーに振り下ろしたが、セイバーはその攻撃を寸での所でかわし、その次に連続で繰り出された攻撃も紙一重のところでかわし続けた。その隙を狙ってアーチャーはバーサーカーに何本もの矢を射ったが、セイバーに攻撃をしながらもその矢を全て斧で弾きとばした。ライダーは背後から鳥に乗って突っ込んできたが、背に武器が刺さろうとした瞬間、セイバーを攻撃していたバーサーカーは一瞬ぐるんと背後を振り向きライダーを斧で弾き飛ばした。
「うわあああああ!」
「っく。こいつバケモノか!」
攻撃をかわし続けているセイバーはなんとか隙をみて攻撃しようと考えているが、避けるだけで精一杯で攻撃しにいけないことにイライラしていた。
「セイバー無茶すんな!下がれ!」
「下がるにも、攻撃がおさまらねぇから下がれねぇんだよ!・・・っ!!」
アーチャーがセイバーの限界を感じて一度下がるように命じたが下がる隙も与えないバーサーカーの攻撃にセイバーは焦りを感じて後ろに飛びながら斧の攻撃を受け止めればその体は勢いよく遠くに吹き飛ばされた。
「セイバー!すみません、先に下に行っててください!」
「ちょっとあんた!」
勢いよく吹き飛ばされたセイバーの姿を見て私はいてもたってもいられなくなり、アーチャーのマスターに先に逃げるように指示をしてセイバーの元へと急いで駆け寄った。
「セイバー!大丈夫!?」
駆け寄りセイバーの前にしゃがみこめば、セイバーは咳き込みながら口から血を吐き出した。
「ほんとお前は・・・・昔から・・・・俺の言う事全然聞かねぇな」
目が少しうつろになりながら痛むお腹を押さえて息絶え絶えに口を開いたセイバーの言葉に、昔から?と何かひっかかりながらも、どこかケガをしていないか確認すれば、斧自体は剣で受け止めきれたらしく、切られたような傷はどこにも見当たらなかった。
「セイバー!ごめん!私の血をっ!」
「アーチャー!危ない!」
セイバーに私の血を飲んでもらおうと腕を差し出そうとすれば、アーチャーのマスターの焦った声が聞えてきた。後ろをみるとバーサーカーの斧が振り下ろされそうになっているアーチャーの前にマスターが出てなにか魔術を唱えた後にアーチャーを後ろに突き飛ばした。アーチャーは尻もちをつくように後ろに倒れこみ、マスターもその上に一緒に倒れていた。マスターの魔術によってさっきのバーサーカーの攻撃は見えない壁のようなものに弾き飛ばされ、2人に攻撃が当たることはなかったが、それは一瞬の出来事だった・・・・・
「っ!マスター!!」
すぐに壊された壁に瞬時に気づき急いで立ち上がったアーチャーはマスターの前に立ちバーサーカーの攻撃を受け止めたが
「がはっ!」
「アーチャー!」
その攻撃を受け止めきれず、アーチャーの体は勢いよく吹き飛ばされた。
「■■■■■ーーー!!」
アーチャーが目の前から消えたバーサーカーはその後ろにいたマスターを完全にロックオンした。まずい、このままだと殺されてしまう!
「逃げて!!」
私は立ち上がり精一杯の大きな声を出してマスターに向かって叫んだが、マスターは逃げれないと覚悟したのか魔術を唱える構えをした。このままでは!このままでは・・・・!
「■■■■■ーーー!!」
「僕のこと忘れないでもらえるかな!これでもシャルルマーニュ十二勇士の一人なんだよ!」
後ろから勢いよく突っ込んできたライダーの武器がようやくバーサーカーの背中に刺さった。やっと攻撃が効いた。と喜ぶのもつかの間、雄たけびを上げたバーサーカーの声によって発生した風でふらついたライダーの隙をついて、バーサーカーが勢いよく斧を横に振り払いライダーの体は再び飛ばされそうになった。しかし、一瞬オレンジ色に体が光ったライダーは、斧の攻撃を武器で受け止めた。みんなが吹き飛ばされるぐらいの破壊力のはずなのになんで・・・・とその光景を見ていれば、ライダーの方に片手を伸ばしているライダーのマスターの姿が目に入った。フードに隠れて表情は見えないが、震えている腕をもう片方の手で必死に押さえ込んでいてとても苦しそうだった。
「今のうちだ!セイバーのマスター!アーチャーのマスター!自分のサーヴァントを連れて逃げろ!」
「えっ!」
「早くしてくれ!いつまでこれが持つかわからない!」
必死にこちらに叫び続けるライダーのマスターの言葉を聞いて、私はセイバーの腕を肩に回して起き上がらせようとしたが、鎧の重さもあって中々立ち上がらせることができなかった。せっかくみんなが頑張ってくれているのにこんな所でへばってられない!
「ぁぁああああ!」
大声を出しながら体に力を入れてなんとかセイバーを引き上げた。膝がガクガクするけどそんなの気にしてられない。このまま一気にドアまで行かなきゃ。
「セイバー、今助けてあげるから待ってて!」
荒い呼吸しか聞えてこないセイバーに話しかけながらドアの方まで歩いていると、「うわあああ!」というライダーの声と苦しげな声を出すライダーのマスターの声が聞えてきた。声のした方を振り返れば、ライダーがボロボロになった状態で自分のマスターの上に倒れていた。恐らくバーサーカーに吹き飛ばされたのだろう。バーサーカー以外のサーヴァントはみんな瀕死状態だし、マスターたちも疲労困憊だ。それに、私は魔術師として何の役にも立てないし、どうしたら・・・・・。
「■■■■■ーーー!!」
バーサーカーからまた聞えてきた雄たけびに一気に思考が引き戻され、バーサーカーが次に誰をターゲットとしてロックオンしたのかがわかった。
「後ろ!避けて!」
喉が張り裂けそうになるぐらいの叫び声でアーチャーの元へと走っているマスターに声をかけたが、アーチャーのマスターが私の声を聞いてこちらに振り向いた時にはすでに背後にバーサーカーの姿があった。間に合わない!そう思った私は、これから起きる最悪な場面から目を背けるように地面へと視線を下げたが、「させるかよ!」という声と一緒に抱えていたセイバーの体が大きく動き、えっ?とセイバーの方を見たのと同時に「■■■■■ーーー!!」という苦しそうな声がバーサーカーから聞えてきた。一体なにが。と思いバーサーカーを見れば、背中には見慣れた剣が突き刺さっていた。
「あれは・・・・セイバーの剣・・・・」
バーサーカーの背中に刺さっているのが、セイバーの剣だと気づき横を見れば、「ざまぁ見やがれ」と荒い呼吸を繰り返したままのセイバーが親指を下に向けていた。この距離で剣を投げるだなんて・・・・と信じられない光景にただただ驚いていたが、背中に刺さったセイバーの剣を自分で抜いたバーサーカーはその剣を握ったまま私たちの方へと走ってきて剣を振り下ろしてきた。
「マスター!危ねぇ!」
私を守るように抱きしめたセイバーはそのまま私と一緒に地面へと転がった。
「っ・・・・・いたい・・・・」
セイバーが守ってくれたから直で地面に倒れることはなかったが、何回もゴロゴロと体が回転したため体の所々が痛かった。抱きしめたまま私の上に乗っかっているセイバーの体を横にずらしながら上半身を起こせば、手にべったりと血が付いているのがわかった。
「せ、セイバー!!」
わき腹をえぐるように斬られているセイバーを見て、私は慌ててセイバーの体を抱き抱えた。わき腹からは血がとめどなく溢れていて、セイバーは声も出さずに荒い呼吸を繰り返していた。
「セイバー!セイバー!!お願い!血止まって!」
私は目からとめどなく溢れてきた涙を拭う余裕さえなくただただセイバーの傷を手で覆った。バーサーカーはすぐにセイバーが死ぬと核心したのか再び私たちへの興味をなくしアーチャーのマスターへと攻撃をしようとした。アーチャーに回復魔術を使っている最中だったマスターはその気配に気づいているが手を止められずにいた。みんながこんなにも頑張って戦っているのに・・・・・私は覚悟を決めてバーサーカーが捨てていったセイバーの剣を握り締めて自分の腕を斬り矢と弓を手に取った。
「許さない!バーサーカー!!」
私の手から放たれた矢は勢いよくバーサーカーへと飛んでいき肩に命中した。バーサーカーにとっては虫にさされたような痛みだっただろうが効果はあったようでまた私の方へと方向転換をして向かってきた。怖いけどそんなこと言ってられない。大切な人がこんなに傷つけられたんだ。絶対に許さない。