「どう、作戦は立てれた?」
モードレッドが行った後、すぐに神宮寺は名無しの元へ現れ、にこっと笑いながら声をかけた。


「神宮寺くん!うーん、作戦って言っても、私は戦闘で全然役に立てないから特には・・・・」
本来ならサーヴァントとマスターが協力して一緒に戦うだろうが、戦闘能力がほぼ皆無の名無しは、役に立つどころか守ってもらうことしかできないため、困ったように笑った。


「そっか。だから、こんな所に残されたんだね。ところで・・・・君は鈴を持っているのかい?」


「えっ?・・・・きゃあ!」
急に腕を掴まれた名無しは、後ろにある木に体を押し付けられた。


「な、何?!神宮寺くん!えっ、どこ触って・・・・ひゃあ!」
急にスカートのポケットの中に手を突っ込まれた名無しは驚いた。


「この中には無さそうだね・・・・。じゃあ、こっちは?」
そう言って、神宮寺は名無しの上の服に手を伸ばそうとしたが・・・・


「やめて!・・・っ?!」
名無しは瞬時にその手を払いのけた。しかし、その拍子に体制を崩し、そのまま地面へ体が倒れた。


「い、いたい・・・・」
受身をとらないまま倒れたため、直に体に衝撃が加わった名無しはすぐには立ち上がれず、そのまま顔だけ神宮寺の方へ向けると、神宮寺は何も表情を変えることなくしゃがんだ。


「ねぇ、ここに何隠してるの?」
倒れた拍子に見えたのか、名無しのスカートの上から太ももの位置を指差した神宮寺を見て、名無しは思わずスカートの裾を押さえた。


「何もない!」


「へぇ、その反応。何もないようには見えないんだけど」
爽やかに笑う神宮寺の笑顔の奥に闇が見えた名無しはすぐに立ち上がってこの場から逃げ出そうと腕に力を入れた瞬間、腰を掴まれた。


「ひゃあ!」


「鈴を持ってないか確認するだけだからそんなに怯えなくていいよ」
そう言って、神宮寺は、腰を掴んで軽く持ち上げたあと、もう片方の手でスカートの裾をすーっとずらしていった。


「っ?!」
とてつもない不快感に襲われた名無しの血の気は一気にさーっと引いていった。さっきモードレッドに見せた時には何とも思わなかったのに、今は少し触られただけでも気持ちが悪い・・・・モードレッド・・・・モードレッド・・・・


「・・・いい加減にして!」
神宮寺の頭めがけて振るった拳は、クリーンヒットし、「いった!」と言って神宮寺の体は後ろによろけた。その隙に名無しは立ち上がろうとしたが、足を掴まれたため、また地面に体を叩き付けた。


「痛い・・・・」
治りかけの膝に激痛を感じた名無しは痛みで顔を歪ませた。


「へぇ、これ何の薬?」


「?!」
神宮寺のその言葉を聞いて、すぐに名無しは太ももを押さえたが、革ベルトに入れていた小瓶が無くなっており、神宮寺の手にそれがあった・・・・


「もしかして持病の薬とか?・・・・では無さそうだね」
手にした小瓶の中を見ながら神宮寺は首を傾げた。


「返して!それがないとセイバーに魔力供給がっ!」
名無しは言ってはいけないことを言ったことに気づき、慌てて自分の口を両手で押さえた。


「なるほど、そういうことか。そういえばあの時も『血を飲んで』とか何とか言ってたもんね。じゃあ、これは預かっておくよ」


「ダメ!返して!」
名無しは神宮寺から小瓶を取り返すために、手を伸ばすと、その手はぱしっと簡単に掴まれた。


「・・・・ゆっくりしすぎたか。急いで戻らないと、ライダーが危なさそうだな」
名無しの腕を掴みながら、反対の腕についた時計を見て思案した後、名無しの方を向き、両手を押さえた。


「っ?!・・・うっ!くっ!」
いくら振りほどこうとしてもびくともしない。鈴はないと言えばやめてくれるのだろうか。だけど、それではセイバーが持っていることがバレて不利になってしまうのでは・・・・と名無しは頭の中で何が一番最良なのか判断がつかなかった。


「はっ!」
その間にも神宮寺の行動は進み、地面に仰向けに倒された名無しは両手を頭の上でまとめて押さえつけられた。


「や、やめて・・・・」
四肢をバタつかせて懸命に抵抗をしたが、体はびくとも動かなかった。モードレッドの名を叫ぼうか。いや、呼んだら彼女はどんな状況でも必ず私の所に来てしまう。きっと体がボロボロになろうともこちらに来てしまう。何も力になれないなら、せめて足だけはひっぱりたくない。そう思い、名無しは今にも彼女の名を叫んでしまいそうな唇をぐっと噛んだ。


「?!・・・・へぇ。偉いね。セイバーのために我慢してるんだ。それなら、悪いけど、もう少し協力してくれ」


「っ?!」
どこから取り出したのか、神宮寺の手には紐が握られており、その紐をすばやく名無しの両手に巻きつけた。そして、両足にも巻こうと視線を下に向けた時にあることに気がついた。


「・・・・膝をケガしたのか。ごめん・・・・ケガをさせるつもりは・・・・後で回復させるから悪いが今は我慢してくれ」
そう言って、神宮寺は名無しがバタつかせている両足を軽々と掴み、すばやく紐で巻きつけた。さっきまでの怖い印象が少し薄れる目の前の申し訳なさそうな表情を見て名無しは首を傾げた。


「唇をもう噛み続ける必要はないよ」


「えっ?うぐっ!」
突然口を布で覆われた名無しは苦しげな声を出した。そして、お姫様だっこをされ、どこかに連れて行かれることに不安を覚え、名無しは神宮寺に視線を向けた。


「君には囮になってもらう。セイバーとの戦いはこれで終わりだ」


「っ?!う゛ー!!う゛ー!!」
囮にされるとわかった名無しはそこから逃げ出そうとまた暴れた。すると、どこに当たったのか、チリンっと一瞬、音が鳴った。その音を聞いて、神宮寺が鈴を持っていることに気づいた名無しは、何とかして奪えれば勝てる。と思ったが、手足を拘束され、まったく身動きが取れない今の状況では何もできることがなかった・・・・。


「紐は痛くないかい?」
地面に名無しを下ろした神宮寺は、紐で結ばれた両手と両足に視線を向け名無しに問いかけた。


「?」
その突然の問いかけに思わず素直に名無しが首を縦に振ると、「そうか」と言った神宮寺は腕に更に何か紐を結びつけた。


「悪いが、少しここにいてくれ。戦いはそれで終わりだ」
そう言って立ち上がった神宮寺は、名無しに背を向けライダーたちの元に走って行った。


「う゛ー!う゛ー!」
神宮寺がその場から去った後、名無しはその場から動こうと体を動かしたが、腕に追加で巻かれた紐のせいでその場から動くことができなかった。その後も何とか紐が外れないか試みたが、状況が変わることはなかった。一人で格闘し続けて10分経った頃、遠くから「マスター!」と呼ぶ、モードレッドの声が聞えてきた。その声は段々と近づいてきて・・・・・


「マスター!」
名無しの見つけたモードレッドは、目を見開いて名無しへと駆け寄った。しかし、名無しは先程神宮寺が言っていた、『囮』という言葉を思い出し、ここに何か仕掛けられているはずだと察し、懸命に「来ちゃダメ」と叫びたかったが、口に挟まれている布が邪魔をして、その言葉を口にすることができなかった。


「待ってろ!すぐに助けてやるからな!」
モードレッドは、剣を地面に刺し、名無しを拘束しているものを外そうと手を伸ばした瞬間・・・・


「「っ?!」」
二人の体を浮遊感が襲い、それと同時に名無しの両手を縛っている紐が上に引っ張られ、強制的に持ち上がった体はモードレッドにもたれかかるように倒れた。


「な、なんだこれ!」
モードレッドは、自分と名無しを捕らえたものに目を向け驚きの声をあげた。2人の体は、今、突然地面から現れた球状の網で覆われていた。


「んっ・・・・!」
突然腕を上にひっぱられた名無しは苦しそうに声を出した。


「大丈夫か?!」
モードレッドは、すぐに名無しの口を覆っている布に手をかけ、外してあげると、名無しは大きく息を吸った。


「モードレッド、ごめんなさい。私が捕まったから助けに来てこんなことに・・・・っひゃ!」
名無しは申し訳無さそうに顔を歪めながら首を下げた。何の力にもなれないのに足をひっぱってしまった。と、名無しの心は自己嫌悪でいっぱいになっていると、突然モードレッドに抱きつかれた。


「一人にして悪かった。死んでも守るって約束したのに、お前に怖い思いをさせた・・・・」
モードレッドは両手でぎゅっと名無しの体を抱きしめ、声を震わせた。


「・・・・モードレッド。私は大丈夫だから、安心して。ねっ?」
今にも泣きそうな声をしている彼女を安心させる為に名無しは今できる精一杯の笑顔をモードレッドに向けた。


「名無し・・・・。どこもケガしてねぇか?・・・・っ?!」
モードレッドは名無しの安否を確認するために名無しの体にざっと視線を向けたが、その時に自分と名無しの距離の近さに気が付いた。


「っ!!」
自分の肩にくたっと体を預ける名無しの柔らかい体の感触に触覚を支配され、不安定な足元でバランスを取るのが大変なのか、「んっ。ふぅ・・・」と声を漏らす名無しの声に聴覚を支配され、髪や体から香る自分と同じ匂いに臭覚を支配され、体制がきついのか少し頬を赤らめてとろんとした目をしてこちらを見る表情に視覚を支配された。マズい。このままだと色々やべぇ。早くなんとかしねぇと俺が死ぬ!


「まずは、足の紐から外してやるからな・・・・っ?!」
そう言ってモードレッドが名無しの足に視線を向けると、その衝撃的な光景に目が釘付けになった・・・・。名無しのスカートの裾がモードレッドの鎧にひっかかって捲りあがり、革ベルトがガッツリ見えるほど太ももが露わになっていた。なんだ、これは夢か?もしかしてこれが罠か?俺を再起不能にするための罠か?とモードレッドの頭は邪の気持ちで満たされ始めた。


「?・・・・モードレッド?」
急に動きが止まったモードレッドを不思議に思い名無しが声をかけると、モードレッドは、はっ!と意識を取り戻した。


「・・・・足、少し動かすぞ?」
少し折り曲げられている足を軽く持ち上げ足を伸ばそうとしたが、密着するように網に捕らわれているため、上手くいかず、体育座りの状態に足を動かそうとすると、重力にしたがって、太ももの位置まで下がっていたスカートは更にすーっとお尻に向かって下がった。その際に一瞬白いものが視界に入り全身の血液が沸騰しかけたが、騎士としての意地を見せ、瞬時にスカートの裾を手で掴み、膝の部分まで戻した。


「ふぅ・・・・ふぅ・・・・」
自分の理性と全面戦争をしているモードレッドの頭は酸欠でクラクラしていたが、名無しに声をかけられ意識を取り戻した。


「モードレッド。そういえば、神宮寺くんが鈴を持ってる。さっき、彼の服から音がした」
先程神宮寺から聞えた鈴の音のことをモードレッドに伝えると、「あぁ、わかってる」と答えた。


「あの男が、自分の雑魚サーヴァントに大事な物を任せるはずがねぇからな。それに、さっき自分でも言ってた・・・・って、おい、ケガしてんじゃねぇか!あいつにやられたのか!」
モードレッドは血が滲んでいる膝を掴み、名無しに問いかけた。先日森で転んでできた傷がせっかく少しずつ治ってきていたのに、それに上書きするようにできた傷にモードレッドは眉間に皺を寄せた。


「あっ。それは・・・・私が鈴持ってるんじゃないか。って疑った神宮寺くんに体を触られて抵抗して逃げようとしたら足をひっぱられて・・・・」
名無しはあの時の事を思い出しながら簡潔に説明すると、急に全身がひやっとした。その正体はもちろんモードレッドで、全身から溢れる殺気が抑えられないのか、その体は怒りで震えていた。


「だ、大丈夫だから!突然スカートのポケットに手を突っ込まれたり、上に服に手をかけられそうになったり、地面に押さえつけられたりはしたけど、それ以上は何もされてないから!」
モードレッドを安心させるために、名無しは慌てて早口で説明したが、それは逆効果だった・・・・


「はぁ?!あいつそんなことしやがったのか!殺す!ぜってぇ殺す!」
あいつ、俺の名無しにエロイこと・・・・じゃねぇ、ひでぇことしやがって!許せねぇ!と怒りを露わにさせたまま名無しの足をしばっている紐を掴み、ほどいた。


「次は上だな。網を引っ張ってる紐と繋がってんのか。じゃあ、まず剣でその紐を切るか・・・・って俺の剣あそこにあんのか」
名無しの腕を引っ張り上げている紐を切ってから、腕の紐をほどこうとしたモードレッドは自分の手元に剣がないことに気づき、周りを見渡せば、先程、名無しの元へ駆け寄った時に地面に刺したままになっていた。大きく網を揺らせばなんとか届きそうだ。と思ったモードレッドは、網を掴み大きく体を揺すると・・・・


「きゃあ!」
急に、大きく動いた網に繋がっている腕が一緒に引っ張られ大きく揺すられた名無しは悲鳴をあげた。


「悪ぃ!名無し、大丈夫か!?・・・・むぐっ!」
悲鳴をあげた名無しに謝りながら名無しの方を向いて口を開いた瞬間、口に柔らかいものが入った・・・・・その突然起きた出来事にモードレッドも名無しも驚き、一瞬固まったが、反射的にモードレッドが口を軽く閉じた瞬間・・・・


「きゃー!!!」
名無しは自分の胸に伝わった感触に悲鳴をあげ、そのままの勢いで、両腕を振り下ろした。


「ぐほっ!」
その両腕は、最速・最大の威力をつけたままモードレッドの頭めがけて振り下ろされた。


「いってぇな!い、今のは、事故だろ!」
殴られた頭を押さえながら顔を真っ赤にさせたモードレッドは、顔を真っ赤にさせて両手で胸元をガードするようにして体を小さく丸め、こちらを睨みつける名無しを見て、うっ。と言葉を詰まらせた。


「だからってそのまま口を閉じる必要なかったじゃない!」
信じられない!という目でモードレッドを睨み続ける名無しは声を荒げた。


「し、仕方ねぇだろ!反射的にやっちまったんだから!」
意図的に、名無しの胸の感触を確かめるために、はむっと口を閉じたわけではなく、あくまで、口に物が入った反射でやってしまったことのため、モードレッドは謝りようがなかった。


「信じられない!ううぅ・・・・」
モードレッドが言い訳を口にするが、聞く耳を持たない名無しはただただ体を縮こませた。


「お、おい、泣くなよ・・・・。つーか、お前、自力で縄はずしたんだな・・・・」
名無しの胸元にある両手に気づいたモードレッドは、そのことを口にすると、名無しも自分の手元に視線を向けて「・・・あ、ほんとだ」と口にした。名無しの体がどんだけ揺れようとも決して外れなかったのに、どんだけ強い力で俺のこと殴ったんだよ。とモードレッドは思った。


「騒がしいね。君たち、一体、何ケンカしてるんだい?」


「あっ!てめぇ!さっさとここから出せ!今すぐ殺してやる!」
森の奥から呆れた表情で現れた神宮寺を見て、モードレッドは大声を出した。


「そんなことするわけないだろ。さっさと鈴をこちらに渡してくれないかい?」
熱くなっているモードレッドとは反対に冷静な神宮寺は軽く眉間に皺を寄せながら、片手をこちらに差し出した。


「は?渡すわけねぇだろ!寝言は寝て言え!」


「・・・・君、今の状況ちゃんとわかってるのかい?剣もないのにどうやってそこから抜け出す気なんだい?」


「そんなもん力でどうとでもなる!」
モードレッドが両手で網を掴み、ぐぬぬっ!と横に引っ張ったが網が壊れる気配はまったくなかった。


「そうか。素直に渡さない気なんだ。じゃあ、君のマスターをこれで傷つけさせてもらうよ」
そう言って神宮寺は地面に刺さっているモードレッドの剣を手に取った。


「「っ?!」」


「まず、背中から刺してみようか?結構痛いと思うけど」
にこっと笑いながら2人に近づいてくる神宮寺を見て、モードレッドは名無しを守るように自分の背中の後ろに隠した。


「こんな狭い空間で、本当に防げると思ってるの?せめて、マスターが魔術の一つでも使えてたらここから出れただろうに。無能なマスターを持つと大変だね」


「あ゛?誰が無能だって?もう一回言ってみろよ。すぐにその首切り落としてやるよ」
名無しに暴言を吐いた神宮寺をモードレッドは今にも殺してしまいそうな目で睨みつけた。


「聞えなかったのかい?君のマスターだよ。まぁ、自分で選べないから可哀想だとしか言えないけどね。・・・・ねぇ、共闘する時に俺と契約しないかい?俺だったら、こんなもの使わなくたって、君にちゃんと魔力供給できるし、セイバーのマスターだって自分が無能なせいでサーヴァントの足を引っ張り続けるのもツラいだろ?いい話だと思うけど」
そう言って神宮寺は名無しから取り上げた瓶を2人の前で振った。一度、綾瀬から魔術師としての能力が低いことを指摘され自分を手放すこと選んだ名無しはこんなことを言われれば・・・・と、よくない想像が一瞬モードレッドの頭をよぎった。しかし・・・・


「いや」


「「っ?!」」
神宮寺の誘いを瞬時に断った名無しの声を聞いて、モードレッドと神宮寺は大きく目を見開いた。


「いくら私が無能でも、魔力供給がろくにできなくても、何もできなくて悔しくても、足を引っ張って苦しくても、セイバーは渡さない。私の・・・・セイバーは私のサーヴァントだから!セイバーが一緒に戦いたいって言ってくれたから!絶対に離さない!」
自分の右手の令呪を覆うように胸元で左手を重ねた名無しは神宮寺を見つめながら力強く返答した。


「・・・・だとよ。俺のマスター舐めんじゃねぇよ」
名無しの言葉を聞いてモードレッドは嬉しそうに笑った。


「まぁ、こいつが俺のマスターやめるって言ったって俺はこいつだけを守り続けるし、お前は勘違いしてるが、こいつは俺が自分で選んだマスターだ」
そう言ってモードレッドは後ろにいる名無しの肩を掴み、自分に引き寄せた。


「・・・・っふ。そうか。じゃあ、仕方ない。まずはこの勝負に勝たせてもらうよ」
神宮寺はモードレッドの剣をつかみ直して名無したちに向けた。


「マズイな。ここじゃ、名無しの逃げ場が・・・・」
せめて名無しに剣が刺さる瞬間に自分が盾になれれば・・・・とモードレッドは考えながら背に名無しを隠し続けた。


「ダヴィンチちゃんに教わっただけで、実際にまだやったことはないけど・・・・」
名無しは何か思いついたのか突然ひとり言のように話し始めた。


「名無し?」
その言葉を聞いたモードレッドは、不思議に思い名無しに視線を向けると、名無しは腕時計に付いているボタンを押した。すると、そこからカッターのような小さな刃物が出てきた。そして、その刃を名無しは自分の指に突き刺した。


「「っ?!」」
小さい刃物でも切れ味は十分だったようで、すぐに指から血が流れるのを見てモードレッドと神宮寺は目を見開いた。


「何してんだお前!」
モードレッドは、慌ててその手を掴もうとしたが、名無しはそれを制止した。


「っく!大丈夫だから・・・・一か八かでやってみる!」
名無しは何を思ったのか、手を銃のような形をして構え、血が出ている指先を神宮寺に向けた。その構えに覚えがあるモードレッドはまさか!と思ったが、次の瞬間・・・・


「・・・・ガンド!」


名無しの指から赤い光が放たれた・・・・・