桂小五郎 月終幕

1日目
sub:蘇芳さんへ
君が長州藩邸に残ってくれることを選択してくれて、本当によかった。
おかげで晋作の機嫌がよくて助かるよ。

私たちにできることであれば協力するから、気軽に相談してくれて構わないからね。

桂 小五郎



2日目
sub:蘇芳さんへ
晋作の思いつきに全部応える必要はないからね。
むしろ、蘇芳さんが晋作をなだめてくれると、私としては有難いのだけど…。

いや、でも食事の手伝いをしてくれるのは助かるよ。

桂 小五郎



3日目
sub:蘇芳さんへ
君は素直だね…。

素直なことは、徳のひとつになりうる。
大事になさい。

桂 小五郎



4日目
sub:蘇芳さんへ
剣の稽古をしたがるだなんて、変わっているね、蘇芳さんは。
いや、感心しているんだ。君のいたところでは女子が剣を持つのは……いや、なんでもない。

蘇芳さんとの稽古が、楽しみだよ。

桂小五郎



5日目
sub:蘇芳さんへ

今日は稽古をつけられなくて悪かったね。
せっかくだから、今度、奇兵隊の訓練に参加してみるかい?

……私は。

私は、蘇芳さんや晋作とは、別な意味で遠回りをしているのかもしれないな。
君たちを見ていると、ときどきそう思うよ。

桂 小五郎



6日目
sub:蘇芳さん
自制の心と冷静さが、ときに、物事の本質を曇らせる――。

私は蘇芳さんに謝らないといけない。

桂 小五郎



7日目
sub:蘇芳さん
晋作もだが、蘇芳さんも、私の不在の間、くれぐれも無茶をしないように。

いいね。

桂 小五郎



8日目
sub:蘇芳さん
蘇芳さんが無事でよかった。君に何かあったら、私は……。

――大久保さんには感謝しないといけないね。

桂 小五郎



9日目
sub:蘇芳さんへ
まさか祭りで太鼓を叩く事になるとは思わなかったよ。

だが、君にそんな顔をされてしまうと、挑発と分かりながら、逃げる気になれない。
…何故だろうね。

桂 小五郎



10日目
sub:蘇芳
私が不用心なために……。
蘇芳!
はやく……意識を取り戻してくれ…。

桂 小五郎



11日目
sub:蘇芳さんへ
名前で呼んでくれてありがとう。とても嬉しかったよ。

大切な人に――蘇芳さんに呼んでもらうと、自分の名前がなんだか特別なものになった気がするね。

桂 小五郎



12日目
sub:蘇芳
私の声が、聞こえるか?

頼む、まだ行かないでくれ。

私は。

まだ君に、伝え――



13日目
sub:蘇芳
晋作のことは、他の者には過労と言ってある。
吐血のことは、内密にしておいてくれ。

それから中岡くん達のことも、心配しないように。
私が――私がなんとかしてみせる。

桂 小五郎



14日目
sub:蘇芳
剣は凶器ゆえ、それを振るう機会がないのは大幸である――。

私の剣の先生は少し変わっていてね。
剣とは、やむを得ないときにのみ振るうものだとされていた。
私も、今でもそう思っている。

私の剣は、きっと今日この日のため、蘇芳のためにあったんだろう。

桂 小五郎



15日目
sub:蘇芳
体が二つあればいいと思うことが、たまにある。
そうすれば、ひとつは必ず君の傍においておけるのにね……。

桂 小五郎



16日目
sub:蘇芳
蘇芳、君の気持ちを取り違えていて、本当にすまなかった。
何よりも、一番大事にすべきだったというのに。

でも、ようやくわかったよ。
晋作の気持ちも、君の気持ちも、そして自分自身の思いも。

私には蘇芳が必要だ。
蘇芳がいてくれれば、この先どんなことがあっても私は乗り越えてみせる。

私を好きになってくれてありがとう。
――心から愛しているよ、蘇芳。

桂 小五郎





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