君という名のプレゼント

今日は、私の誕生日。どうしても誕生日に小娘さんと一緒にいたくて残業を言い訳に引きとめてしまった。
小娘さんは、私の部下で想い人。と、言っても私だけが思っているのだけれど。

『あの…先輩?そんなに見つめられてると仕事が進まないんですが…』

「ふふふ。それはすまないね。仕事は終わりそうかい?」

『はい。もう少しで終わります。』

「さすがだね。いい部下をもったよ」


おやおや。気づいたら彼女を見つめていたようだ。
本当は、部下なんて言葉でなくてもっと自分のものにしてしまいたい。けれど、私の気持ちを一方的に押し付けてしまっては小娘さんを困らせてしまう。
だからせめて、今日というこの日くらいは一緒にいさせておくれ。






『先輩!終わりました!』

「ありがとう。手伝わせてしまってすまないね。」

『いえ。大丈夫ですよ。』

それじゃあ。と帰り支度を始めている彼女に思わず声をかけてしまった自分に驚いた。

「このあと時間はあるかい?もしよかったら手伝ってくれたお礼に一杯どうかな?」

我ながらなんという誘い方なのかと笑いそうになるのを堪えて平然を装って、小娘さんの答えを待つ。

『えっ。でも。』

「私とじゃ嫌かい?」

『そんなことないです!』

「じゃあ決まりだね。」

にこりと微笑むと彼女は、顔を赤くし俯いてしまう。そんな姿も愛しい。





『今日は、ありがとうございました。奢っていただいてすみません。』

「気にしなくていいんだよ。誘ったのは私なのだからね」

『ありがとうございます。』

謙虚に深々と頭を下げる小娘さんを見ていると愛しくて堪らない。
もっと小娘さんのことを知りたい。もっと小娘さんと一緒にいたい。

「ちょっと散歩でもどうかな?」

『…散歩ですか?』

驚いた顔をする小娘さん。おや?驚かせてしまったようだね。無理もないか。
私、自身も驚いているのだから。

「ふふ。小娘さんと行きたいところがあってね。」

『じゃあ、いきましょう。お散歩に』

そう言うと微笑んでくれる小娘さんに私も微笑みで返す。
タクシーを拾い夜景の綺麗なあの場所へ向かう。



『うわー。キレイ!!こんな場所があったんですね。』

「喜んでもらえたなら連れてきたかいがあったよ」

ありがとうございます。と言って夜景に視線を戻す小娘さん。
実は、つい先日見つけたばかりの場所でどうしても小娘さんを連れてきたかったのだが、こんなに早く連れて来れるとは思わず笑ってしまった。

「ふふふ。」

『どうしたんですか?』

「なでもないよ。」

『そうですか。』

よほど気に入ったのか、また夜景に視線を戻してしまった。

その視線を自分に向けたくて言うはずのなかった言葉を口にしていた。

「小娘さんは…私のことどう思う?」

『え?どう…思うって…どういうことですか?』

もう後には引けなくなっていた。どうしてこんなことを言いだしたのかよくわからない。けれど、小娘さんのことをもっと近くで感じたかったのかもしれない。

「俺は…小娘さんが好きだ。もちろん部下としてじゃなく一人の女性として好きなんだ。」

顔を真っ赤にして俯いてしまった小娘さんから返ってきた言葉は、すごく小さな声だったが私にはちゃんと聞こえてきた。

『私も…好きです。』

言い終えると同時に小娘さんを抱きしめていた。

「本当かい?嬉しいよ。」

『はい。私も嬉しいです。』

へへ。と照れて笑い抱きしめ返してくれる、小娘さんが可愛くて抱きしめている腕に力がこもる。

「ふふ。最高の誕生日になったよ。」

『誕生日…えっ!今日、誕生日だったんですか!』

「そうだよ。」

『私…何も用意してないです。』

ショックだったようでへこんでいる。そんな表情も可愛く見えてしまう私は、可笑しいだろうか。

そんなことを思っているとある名案が思いついた。きっと、彼女は顔を真っ赤にするだろう。
そんな彼女の顎をつかみ顔を上に向かせる。

「じゃあ。君をいただこうかな」

彼女に答える隙を与えずに唇を奪う。
軽いキスをして唇を離すとやはり小娘さんは、顔を真っ赤にして何も言えなくなっていた。





君という最高のプレゼントをありがとう。
とても大切にするよ。



⇒あとがき

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