小五郎たんのばーすでー プレゼント編 writer:椿愛子

乾杯の後、皆がそれぞれに料理を食べる。
ま、まずかったらどうしよう!
しかし、そんな心配はいらなかった。
だって、高杉さんが真っ先に

「うまい!さすがは俺の嫁だッ!」

と叫んでくれたから。

料理を褒めてもらえて、嬉しかったけれど、これだけは否定しなきゃっ!

「高杉さんの嫁じゃありません!」

「ははは!手厳しいなぁ!」

高杉さんの言葉を皮切りに、皆が口々に料理を褒めてくれた。
よかったぁ…。

そして、大好きな彼までも…

「小娘さん、料理の腕が上がったね。それにしても、この『けーき』とかいう菓子は変わっているなぁ」

にこり、と微笑む小五郎さん。
ご、後光が………!!

「ケーキ、嫌いでしたか?」

「いや、おいしいよ。よくこんな菓子を思い付くね。小娘さんは賢いなぁ」

「えへへ、そんなに褒めないでくださいよ〜」

へにゃり、と私がだらしなく頬を緩めた、その時。

ガラッと勢いよく障子が開かれた。
だ、誰…っ!?

「…なぜこんな奥の間でやっているのだ」

顔を出したのはタヌキ…ではなく、大久保さん。

ええっ!なんで!?

「おぉ、大久保さん!やーっと来たかえ!もうかんぱいは終わったぜよ!」

何やら訳を知っている様子の龍馬さん。
もしかして、龍馬さんが呼んだのかな?

「かんぱい…?ふん、まあいい」

大久保さんは、いつものように嫌味ったらしい顔をしている。

「桂くん、」

「ふぁい?」

こ、小五郎さんがケーキ頬張ってる!
かっわいい…!!

私の心は、普段見ることのない小五郎さんの姿に激しくときめいた。

「君には世話になっているからな」

そう言って、タヌ…大久保さんが小五郎さんに謎の包みを手渡す。

「は、はあ…ありがとうございます」

小五郎さんは、ちょっぴり困り顔でそれを受け取った。

「開けてみたまえ」

どこまでも偉そうな大久保さん。
小五郎さんに向かってこんな口をきくなんて、一体どういうつもりなの!

包みから、ころんと転がり出たのは。

「お茶碗…?」

「そうみたいだね」

小五郎さんは、私の呟きに優しく返事をしてくれる。
素敵…!!

「桂くんほどの男ならば茶の湯にも精通しているだろうと思ってな。そうでなくとも趣の分かる風流な男だ。この茶碗の良さが分かるだろう。…ちなみに、利休好みの物を選んでみたのだが……それにしては派手か?どうだろうか、桂くん」

長々と語る大久保さんの声は、興味が無いせいか、途中から右耳から左耳へと流れるだけだった。
おかげで風流と利休好みしか聞き取れなかった。
利休好みって何…!
利休って、千利休かなぁ?

小五郎さんは、手に持った茶碗をしげしげと眺めている。

クリーム色っぽい白地に、青や紫の紫陽花。
爽やかな色合いが小五郎さんによく似合う。
私には、風流とか何がなんだか分からないけど、このお茶碗は好きかも。

「そうですね…小娘さんはどう思う?」

「えっ、私!?私は、そのー・・・結構好きです」

「奇遇だね。私もだよ。…ところで大久保さん。なぜ急に贈り物など……」

「なぜ、だと?小娘!お前まだ説明していないのか?」

「あ、えっ、は、はいっ」

「説明?小娘さん、どういうことかな?」

そ、そんな目で見つめられると、私の心臓が…っ!

「ああ、ええっとぉ…」

「ちょっと待ったっス!」

「慎ちゃん!」

「桂さん、」

「はい?」

「おれらからも『ぷれぜんと』があるっス!」

「…へ?」

「武市さん、以蔵くん、それから姉さんも!早く準備してくださいっス!」

「え?準備?プレゼントに準備なんてないでしょ?」

慎ちゃんは訳の分からない事を言うなぁ。

しかし、

「さ、小娘さん、行こうか」

武市さんまで、微笑んで私に手を差し延べる。

「ええっ、で、でも!」

準備とか何も無くね!?

「先生のおっしゃることに逆らうな!」

以蔵が、ぎろりとこちらを睨む。
ちょ、恐い恐い恐い恐い!


そうして、私は半強制的にプレゼントが置かれている部屋へ連行されたのだった。

「ほら、これが桂さんへのぷれぜんとだよ。紫陽花の模様は大久保さんと被ってしまったが、物は被らなかったんだ」

「わぁ、綺麗!それに、小五郎さんっぽいです!」

「当たり前だろう、先生が選ばれたのだからな」

「う、うん」

以蔵の勢いが…!

「君から渡してあげなさい。そちらの方が、桂さんも喜ぶでしょう」

「えっ、いいんですか!」

「もちろんだよ。それから…」

「?」

「君自身を贈るというのも、なかなか趣のあるぷれぜんとだと思うのだが…どうだろう」

「はぁ!?むむむ無理です!」

「そうか…それなら仕方ないね。では、行こうか」

そうして私達は、パーティー会場へ戻った。

「あ、あの…小五郎さん?」

「なんだい?小娘さん」

「こ、こここれっ、私達皆からの誕生日プレゼントです!」

「おや…ありがとう」

小五郎さんは、優雅に笑うと包みを開いた。

「硯箱かい?美しい細工だね。ふふ、ありがとう」

「えへへ、寺田屋の皆が準備してくれたんですよぅっ」

「ちょっ、ね、姉さん!」

「へ?なあに、慎ちゃん。私、言っちゃいけない事言った…?」

「そうじゃないっス!姉さん、言わなきゃいけない事言ってないっスよ!」

「え?…ああ!プレゼントの説明!小五郎さんあのね、プレゼント…ええと、誕生日プレゼントっていうのはね、お誕生日の人に贈り物をすることなんです」

「それも大事っスけど!違うっスよ!」

慎ちゃんが歯痒い!といった様子で叫ぶ。
慎ちゃんったらどうしちゃったのかなぁ…

「姉さん、大事な事忘れてるっス…」

「ええ?んー…な、何だろう。教えてくれる?」

「桂さん、ぷれぜんととか、ぱーてーを企画してくれたのは姉さんなんスよ」

「えっ…そうだったのかい。ありがとう、小娘さん」

「えええ!い、いえ!皆の協力があったから!」
「あー!もう、姉さんはなんでそう謙虚なんスかねぇ!…そこが可愛いんスけど」

「…中岡くん?」

にこり。
確かに微笑んでいるのに、小五郎さんは恐いオーラを出している。

「ぎゃあああ、桂さん、すみませんっス!」

「ええぞ中岡ぁ!桂さんに勝つんじゃあ!」

「ちょ、龍馬さんッ!楽しまないでくださいよ!」

「…ふふ、変なの」

こうして、誕生日パーティーという名の宴会は盛り上がっていく…



ハグ編へ、つづくっ



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