両手に花?

私は、「俺の馬に乗れ」という高杉さんを丁重にお断りして、桂さんの方の馬に乗る事にした。
桂さんから抱きかかえられるかのようにして馬に乗るのは恥ずかしかったけど、おかげで落ちる事も怖い思いをすることもなく、馬に乗る事ができた。

ふと馬の足が止まる。
山間の目的地についたようだ。

「着いたぞ!!!ここが俺のとっておきだ!」

自慢げに高杉さんが手を広げて指し示した方向に目を向ける。

そこは一面のピンク。
満開の桜の木々が私たち3人を待っていてくれた。

「わぁぁ!すごい!」

馬からするりと降り、ぴょんぴょんと喜びを表現する智生をみて桂と高杉は目を細めて眺めていた。
花を背に羽を翻して駆け回る智生は美しい蝶のようだった。


お弁当を広げて3人で囲む。

「智生さんはまた料理の腕が上達したね」

「いつでも俺の嫁になれるぞ」

「なりません!」

藩邸で、繰り返されるやり取りがここでも交わされる。

(忙しい日々の中のつかの間のゆっくりできる時間。二人ともそういう風に思ってくれてたらいいな)

智生の頬は自然と緩み、笑顔が零れていた。

その笑顔を見た二人も満足そうな微笑を浮かべていた。


---

楽しい時間はあっという間に過ぎ、日が傾きだした。

「さぁ、もうそろそろ戻らないといけないね」

「よし、智生!帰りは俺の馬に乗れ!そして俺の背中に抱きつけ!」

「ぇ…」

(行きは高杉さんの運転(?)がちょっと怖くて、桂さんにお願いしたのに…)

「嫌とは言わさんぞ!」

「はい…」

帰りは食後もあって、盛大に馬に酔ったのは言うまでもない。



≪アトガキ≫→

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