岡田以蔵




此奴は何時だって無防備だ。
見てくれもそこそこで、放っておいたら言い寄る男も少なくはない。下心に溢れた輩なのに、此奴はへらへらと人懐こく応えるものだから、危うい状況に至る事もしばしばあった。…全く、何度肝を潰したかしれない。




「――…そんなこと言ったって、道聞かれたら教えてあげたくなるじゃない」

「だが路地裏に連れ込まれただろう?俺がいなかったら、今頃……」

「……っ」


俺の説教に反論し掛けて止めた。
ぐ、と飲み干した言葉の代わりに大粒の涙が零れる。
何故泣く。
慌てて声を掛けると、顔を隠しながら「ごめん」と返ってくる声は震える。


「――…ごめんね、以蔵……」


……あぁ。駄目だ。
俺は此奴の泣き顔には弱いようだ。


「…泣くな、」


俺は過保護過ぎるのだろうか?
此奴に説教するのが間違いだったのかもしれない。
……自らを守ることが叶わぬならば。




「――お前は俺が守る」




…守る剣など知らないけれど。
ずっと傍にいてやろう。君が傷付かないように。







岡田以蔵
『士が守るべきものは、』


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