中岡慎太郎
ふと誰かに願う時がある。
今、隣に居る人と末永く共に居られますように、と。
この人と一緒に笑って泣いて、喧嘩して。仲直りの抱擁に一際の幸福を感じて。握る手の柔らかさに使命感を思い出して…――。
ずっとずっと、傍に居られますように。
貴女の笑顔がずっと続く世にしたい。
「――…慎ちゃん、どうしたの?」
「…ん。ちょっと」
握った手に思いを込めて、目を丸くする愛しい人を見つめた。
ゆっくりと顔を近づけて目を覗き込むと、彼女は頬を赤らめて目を閉じた。
重なっていく唇。その口付けに、末永い世への想いを馳せた。
中岡慎太郎
『末永い世に』
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