ひとつ屋根の下〜三人の想い〜
長州藩邸でお世話になるようになって、どれくらいたつだろう。
怖いことや大変なこともたくさんあった。
けど、それ以上に楽しいことがたくさんここにはある。
そして、なにより私にとって大切な人がここにいる。
高杉さんは私に元気と勇気を与えてくれて、桂さんは優しさを与えてくれて・・・
高杉さんはまっすぐに、桂さんは優しく思慮深くそれぞれの思いを私に伝えてくれている。
私にとって、大切な二人。
けど、私の気持ちは・・・・
そう私の気持ちは・・・・
もう決まっているの。
私もちゃんと伝えなくちゃ。私の気持ちを・・・・
伝える勇気を持たなくちゃ。
たくさんの勇気をもらったもの。
だから私も、勇気をもって私の気持ちをこれから伝えに行く。
藩邸の奥へまっすぐつづく廊下。
その廊下を進むと彼の部屋がある。
どきどきと高鳴る心臓。
ふぅっと息を吐き、障子に手をかける。
「蘇芳です。入ってもいいですか?」
私は俯いたまま障子をすっと引く。
勇気を振り絞って、顔を上げるとそこには大切な人の優しい笑顔があった。
「蘇芳?」
「私・・・
ずっとここにいてもいいですか?
わたし、ここにいたいんです。
だって、わたし・・・・」
言い終える前に、抱きしめられていた。
続きの言葉を発しようとする唇は、彼の唇で塞がれていた。
どれだけの間、抱きしめられて口付けをしていたのだろう・・・・
抱きしめられながら、十分すぎるくらいの優しさが伝わってきた。
「わたし・・・・」
再び言葉が遮られる。
「蘇芳・・・
どんなことがあろうと大切に大切に蘇芳を守る。
ふたり手を携え、歩んでいこう・・・」
彼の言葉を胸に、私はここで生きていく決心を新たにする。
私だけのあなたと共に・・・・
<終>writen by AMY
→アトガキ
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