新しい生活2 20121019
ピンポーン♪
「はい?」
「義くん?私。」
「おぉ〜きたか!ちょっと待ってろ!」
ガチャリと鍵の音がしてドアが勢いよく開いた。
「藍〜、よく来たな。早く入れよ!」
久しぶりに会う兄はいつもどおり優しい笑顔で迎えてくれ、ほっとして、自然と頬が揺るんだ。
「久しぶり〜。このたびはお世話になります」
「おう、可愛い妹の世話ならいくらでもするぞ〜♪悪い虫がつかないようにしないとな!」
「…相変わらずだね。あ、義くん、ちょっと紹介したい人がいるんだけど…」
「………なんだ、その、父親に結婚相手を紹介するような口調は…」
「はぁ?そんなんじゃないってば!誤解しないでよ?」
「え、マジでか?」
「もう!違うってば!高杉さん」
死角に居た高杉さんに手招きをして呼び、その姿を義くんが認めるとますます険しい顔になった。
***
一通り説明を聞いた義くんは相変わらず眉間に皺を寄せて沈黙していた。
この重い重い空気が一体いつまで続くんだろうと思っていると、義くんが口を開いた。
「…お前の言いたいことはわかったがにわかには信じられん」
「そりゃ、そうだよね…」
(私も半信半疑だもん…)
「俺だけならかまわんが、ここにはお前も暮らすんだぞ?」
「わかってるけど困ってるんだし、少しの間此処にいてもらってもいい?お願い!」
「………」
私は黙りこくる義くんに両手を合わせ、必死に「お願い」してみせた。
長い長い沈黙の後、義くんはふぅと大きな溜め息を吐き、ぼつぼつと口を開いた。
「……本来ならどこの馬の骨であろうとお前に近づく男は叩き出したいんだぞ。全力でな。
だが、藍が高杉さんは肺結核にかかっている可能性があるというんなら…話は別だ。
目の前に病人がいるのに何も手を施さないというのは医者の端くれとして我慢がならないからな。」
「…へ?」
「さっさとこっちの部屋に『患者』を連れて来い!とりあえず病状を見ないと話は進まないだろうが。」
「義くん…って…なんか、医者っぽい…」
「はぁ?俺はれっきとした医者なんだよ!大体なぁ、俺はお前の『お願い』を一回も断った記憶はないからな!」
苦笑いを浮かべる義くんはいつもの優しいお兄ちゃんの表情だった。
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