新しい生活3 20121102

義くんは高杉さんに問診と診察し、サンプルの痰を取ると「藍に手を出したら治療をやめて追い出すからな!」と言い残し、出掛けてしまった。

なんだかんだ言ってたけど、「高杉さん」のことを(しぶしぶ)信じてくれ、滞在も(しぶしぶ)許可してくれたらしい。

私たちが話している間、高杉さんは何かいいたそうだったけど、「話が決まるまでは絶対に何も話さないで!絶対に約束だからね!」と念押しし、「武士に二言はない!」とまで言わせたおかげで黙っていてくれたみたいだ。
また、病人ということで色々とあった問題点が解決しそうなので藍は思っていた以上に上手くいってよかったと一人安堵の溜息を吐いた。


「さてと、これから何からすればいいのかな…とりあえず荷物?買出し?高杉さんのことも調べないといけないし…」

一人、首をひねっていると強い視線を感じ、そちらに向くと、真剣な表情の高杉さんと目があった。

「高杉さん?」

「なんだか色々と迷惑をかけることになるみたいですまん。早く戻れるように探るからよろしく頼む」

深く静かに頭を下げる高杉さんの肩を制して、

「そんな、頭なんか下げないでください!私がここまで連れてきたんですから。気にしないでください。
でも…同時進行でかまいませんから、ここで少し病気の治療も受けてくださいね?ここでなら労咳が治るはずなんですから」

「お、おう。でも…な…治療か…」

「でも、なんですか?治したくないんですか?」

「あ、いや、もちろん治るなら治したいが、俺は薬が…苦い薬がちょっと苦手でな…」

目をそらし、すこし照れたような表情で頬を掻く高杉さんは大きな子どもみたいでつい噴き出してしまった。
一通り笑って改めて高杉さんの方をみると少し憮然というかふてくされた子どものような表情でこちらを見ていた。

「…高杉さん?怒ってます?」

「怒ってはないが…それ、やめろ!」

「は?それ?」

「晋作でいい。お前は恩人だしな。ついでにその敬語止めろ!」

「え?いいんですか?私、たぶんかなり年下ですよ?」

「俺がいいといってるんだからかまわん!」

そういうと高杉さんはにかっと笑った。

(本人がいいって言ってるんだから、まぁいいか)

「じゃ、そうします。じゃなくて、そうする。改めてよろしくね、晋作」

私がそういうと一瞬大きく目を見開いた高杉さんじゃなくて晋作は、おなかを抱えて大笑いをしはじめた。

「え?なに?なんなの?」

藍はツボに入ることを言った覚えはないのに涙を浮かべ、大笑いする晋作を見て大きく動揺した。

晋作はひぃひぃと腹を抱えていて、目にはうっすらと涙さえ浮かべていた。


「いや、すまん。呼び捨てにされたのは母上以外の女ではお前が初めてだったからな!」

「えぇ!?もしかして、晋作…さんとかで呼べって意味だった?」

「いやいや、かまわん。」

尚も笑いをこらえてる晋作を見ていると藍も笑いがこみあげてきた。

(武士ってなんだか短気そうなイメージだったけど、晋作ってなんか親しみやすいっていうか。
あぁ、でも現代でも高杉晋作ファンはいっぱいいるから人を惹きつける何かがあるんだろうなぁ。
うん。それは分かるかも。
なんかこの人憎めないもん)




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