出会い 20110330

ぐぅぅと藍のお腹のなる音が静かな部屋に響く。

(うわ!恥ずかしい!!)

何を聞けばいいのか色々思案中だった藍は我に返った。

「…とりあえず、高杉さん。おなか空きませんか?」

「そうだな。そういえば空いている」

藍のお腹の音は知らない顔をして、自らのお腹の辺りを押さえて確認してニカっと笑っているのが子どもみたいでなんか可愛く好感を持った。

「食欲はあるんですね?じゃあこんなのでいいですか?」

(自称)高杉さんが寝ている間に買ってきていた朝食をガサガサとコンビニの袋からテーブルの上に取り出す。
体調が悪そうだったし、何がよいか分からなかったので適当に買ってきたおにぎりとパン、サラダとヨーグルト、ペットボトルのお茶と紅茶を並べた。

「好きな物をどうぞ」

高杉さん腰掛けていたベッドから立ち上がり、怪訝そうな顔でテーブルを見つめる。

「これは食べ物…か?」

「え?…えーと、苦手なものとかありました?オーソドックスなものを選んだつもりだったんだけど…」

「おーそどっくすってどれだ?」

「は?」

(会話が噛み合わない。。。)

「えーと、じゃおにぎりとお茶でいいですか?」といいながら、手渡すと相変わらずの疑問符のようでじぃっと渡されたものを見ている。

藍は紅茶とヨーグルトを手元に引き寄せ、紅茶を開けて飲もうと口をつけた瞬間、固まった。
さきほどまでおにぎりたちに送られていた視線が自分にあることに気付いたのだ。

「な、なんですか?」
藍が紅茶のペットボトルを開ける様子を見て、高杉さんは思案しながらフタの辺りを同じように開けようとしている。

苦闘の末、ようやく開けられたらしいお茶をそのままにして
「これはどうしたらいい?」とおにぎりを手に好奇心丸出しの顔でずいっと近づいてくる。


藍の前に差し出されたおにぎりを開けてみせるとふむふむと興味深そうに眺めていて、すぐにもう1つのおにぎりは自ら同じように開け、満足そうに口へ放り込んだ。

藍はそんな様子を眺めていたが、この二人の気配だけしかないこの空間に耐え切れず、リモコンを手にとり、おもむろに彼の背後にあるTVをつけた。

朝のニュースが流れる。

「おおおお?」

驚愕とも喜びともとれる声をあげた高杉さんは食べるのも忘れ、TVに釘付けだ。

(ん?なんか大きな事件でもあったのかな?)

高杉さんが釘付けになっている画面から流れてくる音声に耳を澄ます。

『……気温は平年よりも5℃ほど低いでしょう。今年は桜の開花は遅れそうです……』

(…なんだただの天気予報じゃない)

「なあ、この小さい人間はどうやってこんな薄っぺらい中に入ってるんだ?」

TVの周りをグルグルとまわり、不思議そうにベタベタと触っている。

(これって演技?ベタな反応だなぁ。。。タイムスリップした人とかのドラマとかこんな感じだもんなぁ。)

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